2018.11.15更新

 今回は、水島広子先生の対人関係療法の著書を引用しながら、「気持ちを話せない悪循環から抜け出す」というテーマでお届けします。

 頭痛、腹痛、下痢、動機、めまい、過食、拒食など・・・身体的には異常がないにも関わらず、ストレスにより体に症状を現れることがあります。表に見えている症状は様々ですが、このような症状が出る人の特徴の1つとして、「気持ちを話すのが苦手」という共通点があります。

 自分の気持ちを話せない人の不安は、主に3つあります。

①自分の気持ちが他人からどう思われるかという不安

 嫌われるのではないか、ダメな人間だと思われるのではないか、などと考えると、なかなか自分の気持ちを打ち明けにくくなります。

②自分の気持ちを話すことによって起こるトラブルを怖れる気持ち

 「いい人」でいようとする人は、他人からどう思われるかという不安を持っているのと同時に、人間関係での対立が怖い、と感じます。人と意見を闘わせることによって問題を乗り越えたり、深い関係をつくった経験がないので、「意見の対立=関係の崩壊」と考えてしまうのです。自分の意見を言うことが生産的な意味を持つというイメージがうまくわきません。身近な人からそのようなプラス例を学んだことがないという人がほとんどです。

③自分の気持ちを打ち明けることで、人との距離が近くなるのが怖い

 人との距離が近くなって「本当の自分」を知られてしまうと嫌われるのではないか、という①の不安に近いものです。

 

 さて気持ちを話さない結果としてどのようなことが起こるのでしょうか。まず、「相手にどう思われるか」を気にして気持ちを言わないと、相手は「本音を言ってくれない、自分と親しくなることに関心のない人」、「つまらない」などという目で見られることになり、必ずしもプラスの効果を生むわけではありません。人間は、相手に点数をつけるために人と関わるのではなく、親しくなって人間関係を楽しみたいから関わることが一般的です。ですから、「完璧な人」よりも「欠点も含めて人間味のある人」の方が好かれる場合が多いのです。

また、対立を避けるという姿勢ですが、相手と気持ちを話し合ったからといって必ずしも争いになるわけではなく、むしろ関係性を深めることになります。説明が不十分なほうが誤解されて対立につながるということもあります。本当の意味で対立を避けたければ、「対立を避けたい」という自分の気持ちを正直に話した方がよいのです。ちゃんと本心を言い合ってお互いを知ると同時に、「相手は本当のことを言ってくれている」という信頼関係を築いていくのが人と親しくなるということです。

「気持ちを話すと相手に振り回される」という考えも、実は全く逆で、自己主張をしていかないと人のペースに振り回されるばかりです。

このように、気持ちを話すことの意味をしっかり意識して人とのコミュニケーションを進めていくことが第一歩になります。

 そして、「私は~思う、~感じる、~したい」という自分の気持ちを、日々確認する必要があります。日記をつけてみたり、「私はどう思ったんだろう?」と、自問自答してみるのも良いかもしれません。気持ちが確認できるようになれば、伝えることの実践です。相手を批判したり、責める印象にならないためには、「あくまで自分の気持ちである」というニュアンスを伝える必要があります。「私は」を主語にして、自分の気持ちを表現してみましょう。このようなことを実践していく中で、相手との信頼関係が深まる過程を体験できます。その繰り返しで、自分の気持ちを話すことの心地よさ、大切さを実感していただきたいと思います。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

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