2019.07.01更新

不安は健全な欲求が存在するから起こる
 例えば、志望校に受かりたいと思っている受験生は入試について不安になります。健康でいたいと思う気持ちが強い人ほど病気になるのが不安になります。仕事で成功したいという欲求があるから、失敗が怖くなります。このように、不安とはそれ自体で存在する何かではなく、「~でありたい」「~したい」という欲求があるから、その欲求を光とすれば、影のように存在する訳です。何も欲求がなければ、不安もないということです。ですから、不安を感じた時に、その不安自体を何とかするという発想ではなく、自分が持っている健全な欲求を実現するためには何が必要かを考えることが大事なわけです。例に挙げた受験生なら、「不安感をどうにかしきゃ勉強できない」と捉えるのではなく、「最大限合格する確率を上げるために今できることは何か」ということを考えて実行することが有益ということです。健康でいたいなら、将来自分がどんな病気になるかを恐れて戦々恐々として日々を過ごすのではなく、健康を維持するための健全な生活習慣を作ったり、合理的な健診を受けたりすることを実行すればいい訳です。仕事で成功したいなら、失敗することばかり考えていないで、成功確率を最大限高めるための努力をすればいいのです。

 

不安は安全が確保されていないという状況を教えてくれる感情で、対処すべき不安と感じるしかない不安の2種類ある
不安は自分にとっての安全が確保されていないということを教えてくれる感情です。不安を感じることは、自分がそういう状況に居ることに気付くために必要なことです。不安を感じるのは意味があるのです。先の例で挙げた受験生なら、「このままでは学力がまだ合格水準に達していない」という状況なら不合格になる確率が高い、つまり、自分にとって安全ではない状況なので、不安を強く感じるのは当然です。この場合は、対処すべき不安ということになります。そして、ここでの対処とは、合格確率を最大限高めるための適切な勉強をするということになります。これが、不安という感情の適切な活用方法になります。まとめると、不安によって安全が確保されていないことが分かり、そのために適切な対応をする、これが不安という感情を活用するということです。一方で、感じるしかない不安とは何でしょうか。この受験生が最大限努力して、模擬試験で合格可能性が80%以上という判定を連発するようになったら、不安は完全に消えるでしょうか。いいえ、以前よりは不安は弱くなるでしょうが、決してゼロにはなりません。なぜかと言うと、人間は未来のことを100%予知することは出来ないからです。どんなに優秀な人でも、合格するかどうかは試験を受けてみなければ分からないという部分がどうしても残ります。だから、やるだけやっても、不安は完全には消えません。これは対処すべき不安ではなく、人間だからこそ感じる、感じるしかない不安ということになります。感じるしかない不安は、感じるのが自然であり、どうすることも出来ないし、どうする必要もないのです。あるがままに受け入れて、自分の健全な欲求を実現するための行動、すなわち、自分にとって価値ある行動を取り続ければいいのです。そうするとき、感じるしかない不安も最も弱くなるはずです。また、感じるしかない不安は、自分が信頼できる人に話して肯定してもらうことも大切です。「そういう状況なら不安を感じるのは当然だよね」と言ってもらうことがとても大切です。不安を感じるのは当然なんだということが、信頼できる人から認めてもらうことで、より受け入れやすくなるからです。

 

不安を活用して、本来の欲求を実現するための行動に専念する
 以上のことから、不安を感じている人がやるべきことは、不安をどうにかしようともがいて不安そのものにアプローチしたり、不安に感じることから逃げたりすることではなく、不安の背後にある自分の健全な欲求をしっかりと認めて、その実現のために重要な行動を取り続けることです。これを行動本位と呼びます。不安感そのものに注目して、不安だから出来ないとか、不安だからダメだとか考えて、自分にとって価値ある行動から遠ざかることを気分本位と呼びます。不安は活用するためにあり、そのやり方を行動本位という訳です。

 

結果ばかり求めることは不安を強くする
健全な欲求に向き合って、その実現を図ると説明しましたが、一つだけ注意しなければならない点があります。それは、目的を結果だけにしてしまわずにプロセスを大事にするということです。受験生の例で言えば、合格という結果が欲しいのですから、それを目指すことは当然です。一方で、合格さえすればOKで、落ちたら何もかもダメという考え方ではどうでしょうか。結果というのはどうしても完全にはコントロールできないものですし、そこに感じるしかない不安が発生するのだと上述しました。それはそうなのですが、やはり結果のみにとらわれると、コントロールできないという感覚が強くなりがちで、不安が必要以上に大きくなってしまいます。これは損だと思います。いくら、感じるしかない不安だから受け入れろと言われても、強すぎる不安では受け入れるのが困難になるかも知れません。だから、プロセスを意識することが大事なのです。受験勉強では、知識を増やしたり、思考力を高めていくというプロセスがあります。単に合格という最終結果だけではなく、そこへ至る過程の中で、どのように知識を増やしていくか、どのように思考力を磨いていくか、そのプロセスにしっかりと向き合って、ひたむきに努力する自分を作っていくのです。このことは合否という結果とは別に、自分でほぼ完全にコントロールできると言っても過言ではありません。このコントロールできている感覚が余計な不安を抑えてくれる働きをするのです。健康を大事にするなら、自分で選んだ健康な生活習慣を日々気持ちよく維持していくプロセスを大事にするわけです。それをやったからと言って、100%ガンにならないという保証はなくても、自分が大事にしたいもののために毎日の運動や食事を気持ちよくいいものにし続けていくことにある種の喜びを感じることは可能でしょう。いい仕事をしたい人は、そのために必要なスキルアップを日々続けていくこと、他人と比較するのではなく、以前の自分より少しずつ出来ることが増えていくプロセスを意識することです。自分の健全な目標に向かって、「今ここ」で出来ることに集中し、着実に歩みを進めていくプロセスをしっかりと意識すること、それが結果だけにとらわれなくするコツです。

 

まとめ 過去を悔んだり未来を恐れたりするより、「今ここ」を大事にする
 結局、未来というものは幻想でしかありません。どうなるか想像したところで、本当のところどうなるのかは誰にも分かりません。分かりもしないことを、あれこれ考えるから不安になるともいえるでしょう。未来を恐れるような人は、過去についてもクヨクヨすることが多いのです。もう過ぎ去ってしまったこと、いくら考えてもやり直せないことをクヨクヨして時間やエネルギーを無駄にするのです。不安が強い人は「健全な欲求」が強い人でもあるはずです。だったら、自分の中にある「健全な欲求」を認めて、それを大事にして、その実現のために行動本位でやるべきことをやりましょう。未来の幻想にとらわれず、「今ここ」で自分ができるベストを尽くすのです。そうすれば「今ここ」は自分のコントロール下に置かれます。その分不安は軽減するはずです。そして、プロセスを大事にして「今ここ」を過ごしていけば、「健全な欲求」が満たされる可能性も最大化するのです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2019.02.22更新

社交不安も、人前場面の脅威を過剰評価して生じる不安反応が「思考」「行動」と悪循環を形成している点は、高所恐怖と同じである。ただし、治療は高所恐怖ほど単純にはいかない。なぜなら、人前場面は高所のように物理的に都合よく制御できないからである。人前で何か失敗するかもしれないということは、ある程度は現実に起こりうることであり、緊張することは正常反応でもあるからだ。相手が自分(の緊張した様子)をどう思うかということも、自分では「コントロールできない」ことであり、「コントールできないこと」に不安を感じるのもまた正常である。つまり、人前場面では完全に安全な状況は設定できない。ここが少し難しい点である。人前場面を避けずに、実体験により脳の学習を書き換えて、余計な不安反応を治めていくという基本方針は高所恐怖と同じであるが、ちょっと工夫が要る。社交不安症状の場合のポイントは以下。

人前で緊張することは自然であり正常である=緊張に対する認知を変える
緊張をしないことを目指すのではなく、緊張しつつ必要な行動が出来ることを目指す=注意を自分の緊張から相手にシフトする
出来るだけ緊張をオープンにする=自分の緊張を隠すのを止める
人前場面での「微妙な回避」に気をつける=学習効果を落とすワナ
一つ一つ解説したい。

①緊張に対する認知:人前緊張で困っている患者は、緊張を悪だと考えていることが多い。緊張はあってはならないもので、撲滅するしかないと。この認知は、悪循環を形成する元となる。なぜなら、緊張は「未知のものへの自然な反応」であり、パフォーマンスを上げる作用を持った必要なものだからである。ゼロにできないものをゼロにしようという患者の努力がうまく行かないことは当然で、その結果、ますます自分の緊張への注目が強くなる。すると「コントロールできない感覚」が刺激され、単なる緊張が不安や恐怖へ発展する。人間の意識は注目したものを強く感じるようになるので、注目は不安を余計強くする。これで悪循環が成立する。心理学の実験で明らかになっていることだが、緊張がパフォーマンスを上げる人と、過剰な緊張でパフォーマンスが下がる人とで、両者の違いは何かというと、ただ一点、緊張に対する認知が違っていたのである。すなわち、緊張でパフォーマンスが上がった人は「緊張は当然のものであり、何ら異常ではないもの」と認知していた。一方、緊張が過剰になりパフォーマンスが下がった人は「緊張は異常であり、無くさなければならないもの」と認知していたのである。
②注意のシフト:人前緊張で困っている患者は、いつも自分がどう見られるかということと自分の緊張状態や不安反応に注意を向けている。その時、相手に対して本当は注意を向けていない。相手に注意を少し向けているとしても「自分をどう見ているか」という点にだけで、相手そのものには関心が持てていない。相手に注意をシフトするということは、相手に誠実に向き合うことでもある。例えばスピーチをするなら、聴いてくれている人たちに何を伝えるのかということに誠実に集中するのである。自分がきちんとやれているかではなく、聴いてくれている人たちに伝えるべきことを理解してもらう最大限の努力を払うことである。聞いてくれている人たちにとっては、患者の緊張などどうでもいい事であり、そもそも関心がないのが普通だ。この時、緊張しながらでいいので、伝えることに注意を向け続けるのが注意のシフトである。しどろもどろでも、赤面しながらでも、声や手が震えながらでも、とにかく誠実に伝えることに集中し続ける努力をするのである。そのためには、相手の反応もちゃんと見ることが必要になる。見られている意識から脱して、自分がまさに周囲を見る側に回るのである。
③緊張をオープンにする:緊張すること自体はコントロールできない。コントロールできないものをコントロールして隠そうとすると、不可能なので、ますます焦る。「コントロールできない感覚」が刺激されて余計不安になる。コントロールできないものは「コントロールできないもの」という範疇に収めてしまうことが、逆説的にコントロール感覚をもたらす。隠せないものは隠さないことがコントロール感覚を高めるである。
④微妙な回避:脳が脅威を過剰評価している状況を体験して、不安反応を抑えていく訳だが、実際に体験するときに気をつけるべき落とし穴がある。高所恐怖の例で説明すると、例えば頑張って高所に行っても、眼を閉じて、ひたすら「ここは高くない」とイメージしていたら、暴露の効果は落ちて当然である。外的には体験しながら、内的には体験してない訳だから。こういうのは、外見的には状況を避けてはいないが、ある意味避けているので「微妙な回避」という。人前場面でも、同様のことが起こる。スピーチから逃げずに実行する、それ自体は良いことだ。しかし、周りの人たちのことを見ないで、話しの内容を伝えることにも集中しないで、ひたすら、覚えてきたセリフを早口で言って終わりにするとしたら、実は回避しているのと同じなのだ。これでは、「自分は緊張しても必要な行動ができる」という内的体験にはならない。その結果、脳の学習も上書きされない。ただただ、苦痛を我慢して耐えしのんだということで終わってしまうのだ。頑張って暴露したつもりが逆効果になることさえあるので「微妙な回避」を認識することは治療の成否にかかわる重要なことだ。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2019.02.21更新

不安反応

 人は、ある状況について「危険かもしれない」と認識したときに、脳から体全体かけて自動的に不安反応が引き起こされる。不安反応とは、起こりうる危機に対応するための闘争・逃走のための準備状態を作り出すことを目的としている。そのために、自律神経のうちの交感神経が活発になり、動悸・息苦しさ・赤面・声や手の振え・冷や汗などが出現する。この反応は「危機」を乗り越えるための原始的な警報反応であり、「危機」が本物であれば、生存に適した反応である。また、警報なので不愉快ではあるが、基本的に無害なものである。

 

不安障害という病気

 何らかの原因で、ある種の状況に対して、その脅威を過剰評価してしまう結果、引き起こされる不安反応と「思考」「行動」に悪循環が形成されたものを不安障害という。

単純な不安障害には「単一恐怖」と呼ばれる疾患がある。例えば、高い所が怖い「高所恐怖」がそれにあたる。高所恐怖の患者は、実際には危険がほとんどないような高所でも「危険な状況」と認識してしまう。これは心でそう思うというよりは、脳が勝手に認識してしまう「条件反射」に近い。だから、理屈では「危険はない」と理解していても、脳が勝手に「危険だ」と認識して不安反応を生じてしまうので、患者は「コントロールできない感覚」を持ってしまう。その「コントロールできない感覚」が患者をより不安にする。コントロールできないことは「どうなるか分からない」「自分は対処できない」ということだから当然である。すると、患者(の脳)は「高所でコントロール不能な不安反応に襲われて、自分にはどうすることも出来ない」と学習してしまうので、患者は高所を回避するようになる。回避することで「高所は危険」という脅威に対する過剰評価が是正される機会を失う。さらに、患者(の脳)は回避して助かったという学習を自動的にしてしまうので、回避できない状況での不安反応はより強くなってしまう。その結果、「高所は危険」という過剰評価はますます強化されて・・・。あとは悪循環である。患者がどんなに理性的に「高いだけで危険などない」と自分に言い聞かせても、脳の学習には全く効果がない。脳の学習を書き換えることができるのは、現実の体験だけだからである。つまり、行動療法が必要なのである。

 

行動療法のコツ

 先ほどの高所恐怖の患者を例にとると、①高所を避けずに体験して、②現実には脅威はないことを、③「脳」に学習させる、④それを繰り返すことで、⑤不必要な不安反応の出現が抑制される、ということである。一つずつ解説したい。

①高所を避けない:患者の脳は「高所は危険」と学習しているので、避けずに暴露しようとすれば、必ず不安反応が起こる。患者はこのことを十分に理解する必要がある。要するに、少なくとも暴露を始める初期には、不安反応を避けられないということである。患者が恐れている不安反応が起こるわけだから、誰も好き好んでそんなことをやろうとはしない。だから、このプロセスが治療上不可欠なことを十分に納得してもらうことが必要である。また、初期は不安反応を薬物で適度に抑えてあげることも有用である。ただし、不安反応を薬物で完全に抑えることは不可能だし、無理にやろうとすれば患者は薬漬けになる。不安反応をある程度は体験しつつ、それが無害であることを脳に学習さえるためには、ある程度の不安反応は体験してもらわなければならない。薬で不安反応を抑えることを治療の目的と勘違いしてしまうと、脳の学習の書き換えは絶対に起こらなくなり、患者は永遠に治らなくなる。
②現実には脅威はない:しっかりと安全性が確保されていれば、高い所も危険ではない。避けずに安全な高所に登り、不安反応が引き起こされても、それは当然なことだと理解していれば、逆説的に状況をコントロールしていることになる。「不安反応そのものはコントロールできない」という枠組みで状況全体はコントロールしているからだ。時間が経てば必ず不安反応は落ち着いていく。
③「脳」に学習させる:実体験で高所での不安反応は何ら有害な結果をもたらさず、時間とともに消えていくことを体験すれば、脳の学習が上書きされる。
④同じことを繰り返し練習すると、学習効果は上がっていく。当然のことだ。
⑤脳が「高い所でも安全性が確保されていれば、危険ではない」と学習できれば、高所に対する脅威の過剰評価はなくなり、その結果、余計な不安反応は勝手に治まる。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2019.01.24更新

今回は私から見て「いい医者」と思える条件を挙げてみます。決して自分がすべての条件を満たせているわけではないくせに、あえて書いてみます。

1.病気についての知識

専門家とはいえ重箱の隅的なことまで熟知していることはありえませんが、患者さんからの当然の質問には答えられるくらいの知識があることは必要でしょう。その一方で、自分に分からないことは知ったかぶりをせずに率直に分からないと言える謙虚さも必要です。さらに、病気に関する知見は日々新しいことが出てきますので、勉強してアップトゥーデイトする姿勢も大事です。


2.傾聴の態度

特に初診の際など、患者さんの話をきちんと聴くこと。時間的な制約はもちろんあるのですが、患者さんが本当に言いたいことや気持ちを想定しながら聴くことが大事でしょう。患者さんの考えが間違っている時もいきなり否定的に返さず、どうしてそう考えるのか話し合える余裕があるべきです。患者さんの話が分からないときは、表面的にわかったふりをしないことも大事です。さらに、必要なときには患者さんを叱ることができる人間力も備わっているのが良いでしょう(ここは私の一番弱い部分ですが・・・)。


3.薬物の使用が適正

薬の効果や副作用について十分な知識があり、患者さんに説明できることは当然です。

うつ病で抗うつ薬を使用する場合は、ためらうことなく十分な量・期間投与することができなければなりません。患者さんの飲み心地を重視しますが、初期だけの副作用で慣れれば消えていくようなものと考えられるものなら患者さんを励まして乗り越えてもらうことも医者の仕事です。薬の中には副作用チェックの採血が定期的に必要なものや血中濃度の管理が必要なものがありますが、そういう検査をきちんとすることです。以前は安全と思われ頻用されていたベンゾジアゼピン抗不安薬は、依存や気分不安定化、長期的には認知症のリスクがあることなどが分かってきており、安易に処方しないことや、漫然と投与を続けないことが必要です。すでに常容量依存になっているケースで断薬できるように持って行けるテクニックも必要です。


4.薬以外の治療的観点がある

薬以外にも、例えば不安障害には曝露療法が有効であり、基本的な行動療法は行える技量はあるべきです。自分でやらなくても心理士に代行してもらう指示が出せることが必要です。患者さんを取り巻く種々の環境要因に配慮することも大事です。患者さんのパーソナリティ、価値観にも意識を注ぐことができなければなりません。


5.患者さんが治ることが喜び

これがないと医者の仕事はできません。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2019.01.22更新

⑤大事な人には本当の気持ちをきちんと言葉で伝える
依存性薬物を動物に投与すると、その動物は依存性物質を自ら摂取するようになります。当たり前の実験ですが、この先が重要です。その動物を孤独な環境に置いておくと、依存行動は変化しませんが、仲間の中に戻してあげると、だんだん依存性物質を摂らなくなることが分かってきました。孤独がいけないのですね。人間の場合は、見るからに孤独ではなくても、孤独な状況というのはよく見られます。それは、本音を抑えて人と関わっているという状態のことです。特に双極性障害の患者さんは、物事をズバズバ言うような印象とは裏腹に、デリケートな本音はなかなか言えない人が多いです。他者の気持ちを推測する力に長けているために、相手に配慮しすぎてしまうこともあるでしょう。また、強気に見えて繊細で、傷つくことを過度に恐れているせいかもしれません。

でも、本音はちゃんと言葉で伝えなければ分かってもらえません。ここぞという時は勇気が必要です。そうやって、本音をちゃんと言葉で言えるようになると、人と関わることが随分楽になるはずです。孤独から抜けられるということです。

 

⑥深く見抜くこと
病気や過食がどんなものか頭の先っぽで理解するのだけではなく、本当に見抜いてしまえば、自分を責める必要はないし、誰かのせいにする必要もないし、自分が何をすればいいのかに集中できるでしょう。例え、失敗することがあっても、それは不可能なことだからという意味ではなく、単に練習が必要だという意味だと深く見抜いてしまえば、焦りや不安に支配されずに済むでしょう。

例えば、あなたに素敵な恋人がいるとしましょう。あなたはその人のことが好きで好きで、ちょっとでも会えないとさみしくて仕方がない。そんな時に、何かの事情で、その人と別れなければならなくなったとしたら、簡単に気持ちを変えられますか?答えはNOですね。諦めようと頑張るほど、好きな気持ちは強くなるかもしれません。しかし、その恋人が実際にはとんでもない人物で、あなたをだましていただけということが本当に分かってしまった場合はどうでしょうか?要するにあなたが、相手の本質(自分にとって本当に大事な人ではない)を深く見抜いてしまったら?その時はあれほど好きだった気持ちを変えることがそんなに難しくはなくなっているはずです。もちろん、楽しかった時間を失った寂しさや、だまされた怒りは感じるでしょうが。

病気についても同じことです。単に知るだけではなく、深く深く見抜こうとしてください。どんなふうに極端な思考と感情があなたをだまそうとするのか、どんなに今まで病気に行動を合わせてきてしまったか・・・などを、私の言葉を鵜呑みにするのではなく自分で確かめてみてください。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2019.01.18更新

③健康的にやせることを目指す
適度にやせて綺麗でいたいという気持ちは女性なら当然です。そのために最も有効なことは基礎代謝量を上げることです。基礎代謝量を上げれば、リバウンドしにくい体になります。基礎代謝量は筋肉を増やすことで上げられます。有酸素運動はここでも有効なわけです。基礎代謝量は基礎体温の変化で確かめることができます。基礎体温を1℃上げることを目標にしましょう。

 

④ありのままの自分を認める
人からどう見えるのかを気にしているうちは自分を本当には認められず、いつも心のどこかでビクビクしていなければなりません。そこに心の安定はないでしょう。ストレスを感じやすい状態になってしまいますね。あなたの病気や外見を理由に、あなたから離れる人は、あなたにとって本当に大切な相手ではないはずです。つらい病気に真剣に向き合い、治るための前向きな努力をしいること、今はそれだけでも十分です。そんなご自分を認めてあげてください。もしも、もっと自分を認めたければ、①自分は他者に与えられる存在であることを意識する②他者に感謝の気持ちを持つ、ことがコツです。与えることとは、自分の仕事を誠実にこなす、気持ちよく挨拶をする、笑顔で柔らかい態度で人と接する、ちょっとした親切をこころがける、などで十分です。感謝は、「これは何のありがとうだろう?」と考える習慣を作ればOKです。例えば、毎日乗る電車が時間通りに動いていたら、その背景に運行を支えて頑張っている人たちがいることに「ありがとう」ですし、雨が降ったら植物や作物を育ててくれていることに「ありがとう」です。そんなことはきれいごとで心からそうは思えない、と感じても今は気にしなくて大丈夫です。ウソっぽくても、心の中で「ありがとう」とつぶやいてみるだけでよいのです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2019.01.18更新

②過食について理解する

過食はなぜ止めにくいのか?それは依存性薬物と同じ脳内メカニズムがあるからです。それは「すぐに効果が得られる行動や物質は脳内に『止められない回路』を形成する」ということです。過食の効果はもやもやした気持ちを和らげることです。これは過食を始めるとすぐに効果が現れます。過食をして3時間後にやっと気分が和らぐなら誰も過食が習慣化することはないでしょう。こうした効果はアルコールで5~10分、たばこではなんと7秒です。効果発現が早いものほど「止められない回路」を形成する力が強いですが、60分以内に効果があるものは習慣性が生じやすいと言われています。

いったん「止められない回路」が形成されると、回路が刺激されたときに目的(過食や依存性物質)にむかう強力な欲求が生じます。これを自力でコントロールするのは非常に困難。ただし、これはいったん回路のスイッチが入ったら途中で止めるのは至難の業という意味であり、回路のスイッチを入りにくくする工夫は可能です。つまり、過食行動がそもそも始まらないように環境を調整することが大事になります。過食しやすい状況、空間、時間、などにさらされるだけで回路のスイッチが入り、強い過食欲求が始まってしまうことがあります。例えば、余計な食べ物がいつでも手を伸ばせば手に入り、自由に食べられる状況では過食を止めることは難しいのです。自分が過食しやすい状況を整理してそれを避けることが必要です。実際、多くの人は誰かと楽しく食べるときは過食しないで済みます。

 

吐くという行為も過食を止めにくくします。吐くことも「止められない回路」を形成します。効果は体重増加がキャンセルされるように感じるということです。そしてこれは嘔吐すればすぐに生じる効果だからです。ただし、実際には体重増加は長い目で見ればキャンセルされないどころか、かえって体重は増えてしまいます。それは、吐くことで過食への心のハードルが下がってしまうこともありますし、インスリンの過剰分泌に続く異常な空腹感が次の過食スイッチを入れてしまうということから必然的に起こります。ですから、過食を止めたければ、まず、嘔吐を止めなければなりません。過食後に嘔吐をしにくい環境、例えば人ごみとか、に行くことが一番有効です。また、嘔吐の衝動は時間が経つと低下しますので、吐くまでの時間を引き延ばすことが有効です。5分から始めて徐々に伸ばすのです。待っている間は、嘔吐がしにくい他の行動をやります。どういう行動が使えそうかを前もってリストアップしておくといいでしょう。

 

食べる内容や食べ方にも気をつけましょう。炭水化物などの糖質はインスリンの過剰分泌を引き起こし、次の過食を誘発しやすくするだけではなく、太りやすくなる原因となります。インスリンには食べたカロリーを脂肪にして蓄える働きがあるからです。これを防ぐためには、タンパク質と脂質をきちんと取ることです。脂質はカロリーが高いと思われがちですが、満足感を得やすく、かえってトータルのカロリーは抑えやすくなります。またインスリンの過剰分泌を引き起こさないので、太りやすい体にはならないのです。食べ方としては、最も大事なのは、どんなに過食しても規則的な3食の食事は決して抜かないことです。双極性障害の治療として正しいことをしない限り、結局過食も治せません。「そんなに食べたら太ってしまう」という考えや不安は極端な思考と感情そのものです。振り回されないようにしましょう。過食をしてしまうときも、きちんとした食事として扱いましょう。きちんと盛り付けたりセッティングして、BGMを流したり、食事として摂りましょう。どんなに、途中から早食いになってしまうとしても、ぎりぎりまでゆっくりよく噛んで味わうように練習しましょう。そうすることで、トータルの摂取カロリーを抑えやすくなります。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2019.01.17更新

当院では双極性障害Ⅱ型の患者さんが多いのですが、過食症状を合併している方が一定の割合で存在します。

そのような場合にどんなふうに対処するのが良いかをまとめてみます。

 ①まずは双極性障害を治す
双極性障害は気分が上下するだけではなく、考えや感情が極端に走りやすくなる病気です。

そのため、衝動性が高くなります。

衝動性とは目先の利益を優先してしまうあまり、長期的な損失をこうむる行動を選択するということです。

うつ的な気分になったり、ストレスでもやもやした気分になったりすると、「この気持ちを早く何とかしないと、耐えられなくなる」とか「この気持ちのままでは何もできなくなる」などと考えやすいし、とても不安になったりします。すると、手っ取り早く不愉快な気分を解消しようとして飲酒や過食に頼ることになります。このとき、理性的には飲酒や過食は結局のところ自分のためにはマイナスだと分かっているのですが、衝動性が高い状態では目先楽になるという誘惑に応じてしまうわけです。この状態では過食を治すのはほぼ不可能です。

ですから、まずは双極性障害を良くして、うつ的な気分に陥らないようにし、衝動性をコントロールすることが大事です。それだけで、過食が治まる人もたくさんいます。

極端な思考や感情に襲われたときに、病気の症状であることにいち早く気付くようにする。
極端な思考や感情は「現実を反映していない」ということをいち早く思い出すようにする。
極端な思考や感情は症状であり、今はコントロールできないことを認める。そうすることで、コントロールできない自分を責めるような不毛なことをしない。
その一方で、常に行動は自分で選択する余地が残されていることを思い出す。極端な思考や感情に合わせた行動をとるか、自分にとって本当に価値ある行動をとるかは自分で選べる。ただし、失敗しても諦めず練習を続けることは必要。理屈を教えてもらっても練習しなければ楽器やスポーツは上手くならないのと同じ。逆に言えば、すぐにできなくても練習すればできるようになるということ。
そんなに時間をかけている余裕はない!という心の声があれば、それこそまさに極端な思考や感情という症状である。症状に振り回されないように気を付けて。
双極性障害の治療に必要な生活・行動を練習し続けよう。定期的な服薬、規則正しい生活リズム、禁酒、有酸素運動の習慣、適度な活動性を維持する、など。基本ができているかチエック。できていないところがあれば、完璧にできなくてよいので、少しでも目標に近づけられないか考えましょう。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2018.12.18更新

運動することが身体に良いことは誰でも知っていますが、近年、精神の健康にもとても良いことが実証的に示されています。

適度な運動は、ストレスによる不安反応が過剰になることを抑制してくれるという研究もあります。

不安・抑うつの改善のみならず、うつ病の発症予防にもなることが分かっています。

ストレス対策と言うと、今は認知行動療法が流行りですが、考え方を変えるというような「面倒なこと」をわざわざしなくても、気持ちよく運動することで効果が得られる可能性があるわけです。

私の患者さんでも、診断によらず、運動習慣を作った方たちは気分が安定して、薬の効果もよくなる印象が確かにあります。

問題は、うつ症状が強い時は、運動する気力も出ないので、その場合の治療として使うには工夫がいるということでしょう。

まずは、日々の生活の中で、有酸素運動の習慣を作っておくことがお勧めです。

1回20~30分程度の早歩きを週3回くらいやるだけでも効果があるようです。

行き帰りの通勤時を利用したり、オフィスビルの階段を利用すれば効率よくやれそうですね。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2018.12.13更新

当院に通院している患者さんにも多忙な方が結構いらっしゃいます。

私は、どんなに忙しくても最低6時間の睡眠をとるようにお伝えしていますが、仕事でどうしても4~5時間しか睡眠時間を確保できないという話をよく聞きます。

睡眠不足が慢性化して、心身に悪影響がもたらされている状態を「睡眠負債」と言います。テレビで紹介されてご存知の方も多いのではないでしょうか。

睡眠負債では、自覚的な眠気の感覚は「慣れ」によって弱くなるものの、脳の処理能力は確実に落ちていることが明らかになっています。ドライブシミュレーターを用いた実験によると、6時間未満の睡眠を2週間続けると、2日間全く寝ていない時と同様の認知機能障害が生じるとのことです。

つまり、仕事のために睡眠を削ると、本人は仕事をちゃんとやっているつもりでも、相当効率が低下して質の悪い仕事になっている可能性が高いということです。

患者さんには酷な言い方になってしまいますが、睡眠を削るくらいならさっさと諦めて、しっかり眠ってからやる方が脳の性能を引き出せるということです。

ちなみに、慢性的な睡眠不足に陥っているかを簡単に調べる方法は、平日と休日の睡眠時間の差を見ることです。休日に2時間以上睡眠時間が長くなるようなら慢性的な睡眠不足の可能性が高いです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

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