2017.10.27更新

患者さんへの情報提供

 患者さんに十分な情報提供を行うことは医者の義務です。しかし、医者の側が十分に説明したつもりでも、患者さんがきちんと理解できているとは限りません。限られた診察時間で、耳から聞いた情報では、そのときに理解したつもりでも、忘れてしまう場合もあります。当院では、こうした情報不足を補うためにいろいろな資料を作って、患者さんにお渡ししています。

一例として「〇〇恐怖症、不安・緊張症状の治療のために」という内容をここにアップさせていただきます。

【基本的な理解】

高い所が怖い、狭い所が怖い、尖った物が怖い、雷が怖い、人前で緊張することが怖い、赤面するのが怖い、手が震えるのが怖い、汗が吹き出るのが怖い、電車の中で大便が漏れることが怖い、パニック発作が怖い、吐いてしまうことが怖い・・・いろいろな恐怖症があります。怖いもののテーマは様々でも、すべてに共通することが2つあります。一つは、落ち着いている時に冷静に考えれば、不安・恐怖が「過剰」つまり「行き過ぎている」ということ。もう一つは「回避行動」つまり「症状のせいで何かから逃げるという行動」が発展することです。

このような病気はどのように生じるのでしょうか?「不安を感じやすい身体的要因」と「不安と回避の悪循環的学習」という側面を理解することが大切です。最初の症状出現は、いくつかの条件が偶然重なって起こるようです。例えばパニック障害という病気では、仕事が忙しくてストレスがたまっていた、睡眠不足だった、昨夜飲み過ぎた、遅刻しそうで走って電車に飛び乗った、などの状況で初めてのパニック発作(激しい不安発作)を経験します。その経験が、あまりにも不快で辛い体験であるため、「また発作が起こったらどうしよう」という予期不安が高まります。その結果、発作が起こったら困る状況を避けるようになり、「ちょっとドキドキしたけど、電車を降りたから発作にならず助かった」というような回避行動による一時的な不安の軽減という学習を繰り返してしまいます。すると「逃げ癖」がついて、さらに回避行動が発展し、その結果、症状に対する不安は一層強くなっていきます。いざ回避できなくなったときに耐えられなくなってしまい、患者さんはますます自信を失います。これが悪循環的学習です。

そもそも、不安や恐怖という感情はなぜ存在するのでしょう?それは、動物が天敵等の危険に遭遇した際に、逃げるか戦うかという非常事態に適応するための警報と考えられています。これは自律神経の一つである交感神経の働きです。〇〇恐怖のような症状は、本来は危険ではないものに対して、「危険である」という誤った認識が脳の中で成立してしまい、それが回避行動という誤った対処法によって強化・維持されたものといえます。安全が確保されているはずの高い所が、高所恐怖の人の脳の中では「危険」であり、パニック障害の患者さんの脳の中では電車の中が「危険」、赤面恐怖の人の脳の中では、何でもない社交場面が「危険」というわけです。

【不安を感じやすい身体的要因とはなにか?】

脳の中には不安を感じる神経回路が存在します。その回路が不安定になることで誤作動が生じやすくなると、本来危険ではないものに対する恐怖反応が起こりやすくなります。身体的要因には以下のものがあります。

・遺伝的な要因

・睡眠不足、不規則な生活

・疲労、ストレス

・運動不足

・風邪などのちょっとした不調

・アルコール

・ニコチン

・カフェイン

・違法ドラッグ、脱法ドラッグ

・うつ病、双極性障害などの精神疾患

【回避行動とはなにか?】

 患者さんが症状から逃げようとして行う行動のすべてが回避行動です。辛い症状から逃げたくなるのは人情であり自然なことです。しかし、〇〇恐怖というのは、本来は危険ではないものに対する過剰な不安・恐怖反応が誤って脳の中で学習されてしまったものであり、回避によって「本当は脅威ではない」という再学習が出来なくなってしまうという点がポイントなのです。回避行動には分かりやすいものと分かりにくいものがあります。パニック発作の患者さんが電車を避けるのは分かりやすい回避、電車に乗るときにドアの側から離れず奥の方に行かないのは分かりにくい回避です。赤面恐怖の人が、人を避けるのは分かりやすい回避、社交場面で酔ってしまおうとするのは分かりにくい回避です。雷恐怖の人が雷雲を避けるのは分かりやすい回避、雷情報を過剰に閲覧するのは分かりにくい回避です。そして、恐ろしいことに、抗不安薬を頓服で使うという「治療行為」でさえ、使い方を誤ると、もっとも分かりにくく止めにくい回避行動になってしまうということなのです!

 どんな治療を行ったとしても、回避行動がある限りは本当の意味では病気は治りません。回避行動を徹底的に止めて行く事がどうしても必要です。これは人情に反した、不自然な行動です。こんなことを好んでする人間はいません。だから、回避行動を止めていくためには、医者患者間の信頼関係が重要であり、患者さん自身の強いモチベーションが必須となります。治療者や薬任せでは絶対に治りません。

【治療方針】

 まずは、以上のことを良く理解することです。本来は危険でないものを脅威と認識して、不安回路が誤作動を起こし、交感神経の過緊張が症状を引き起こしていること。そして、さらに重要なことは、症状から逃げようとする回避行動が病気を維持・悪化させているという事実を理解してください。

 次に、身体的要因を極力無くすことです。

・規則正しい生活、7時間以上の睡眠

・アルコールは原則摂らない、カフェイン、ニコチンの摂取は出来るだけ減らす

・違法、脱法に関わらずドラッグは絶対にダメ

・運動習慣を作る ウオーキング1日8000歩以上目標

そして、交感神経に対抗するリラックスの自室神経である副交感神経を刺激するリラクゼーション技術を身につけてください。腹式呼吸法がお勧めです。 

その上で、回避行動を少しずつ止めていくことに最大限の努力をしてください。やり方の相談は医者にしてください。抗不安薬の頓服は、薬以外の回避行動を止めていくためだけに使うことが必要です。ただ、その場の症状から逃れるために使うのであれば、「治療行為」が本当の意味では治療ではなく、病気を維持・悪化させてしまうという皮肉な結果になってしまいます。

【症状を抑える薬をうまく使っていくだけでは何がいけないのか?】

 これはいけないことではなく、患者さんが選ぶべきことです。症状が比較的軽度で、かなり限られた状況でしか起こらない場合などは、薬で抑えてしまえば済むかもしれません。

 一方で、薬を飲み続けることには不便なことやリスクもあります。例えば、抗不安薬は基本的に飲酒を避ける必要があります。実際には、服薬しながら飲酒している方もいますが、記憶の混乱を引き起こす、吐物をうまく排出できずに窒息する、などの危険もゼロではなく、お勧めできません。また、抗不安薬を長期に続けると、気分が不安定になったり、いざ薬を止めようとすると不安が強くなったりすることがあります。さらに、将来的に認知症になる可能性が上がるのではないかという海外の報告もあります。繰り返しますが、ご自分の治療で何を優先したいかを選ぶのは患者さんです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2016.12.01更新

 今年からストレスチェック制度が始まり、高ストレス者の医師面談を行うようになりました。そこでよく出会うのは、やはり長時間残業をしている労働者。

少し前、電通で長時間労働を強いられていた方が自殺したというやりきれないニュースがありましたが、まさに氷山の一角です。それでも、きちんと時間外労働時間が管理されているならまだいい方で、多くの企業では、いまだに時間外労働を正確に記録できていないのが実態です。

 

なぜきちんと打刻しないのか労働者に尋ねてみると、職場風土の問題として残業申請をしにくい状況があったり、正確に打刻しにくい雰囲気があったりするとのことです。申請しようとしても上司から嫌な顔をされる、残業が長いとただ「残業時間を減らせ」と言われ業務量は減らないから困る、先輩たちもつけてないからとか・・・。労働者側にも「自分が効率的に出来てないだけだから残業申請するのは申し訳ない」「みなし労働なのでどうせ残業代がつかないから申請しない」などの心理が働くことが要因になっているようです。

 

長時間労働が常態化すると、結局、時間内に終わらせるという健全な緊張感も弛緩してしまうようです。

帰宅が遅くなり、睡眠時間が削られ、脳の機能が低下し、効率が落ちます。そして、効率が落ちることにより、時間がかかり、ますます長時間残業から抜けられなくなる悪循環も生じます。深夜に及ぶ残業をしている間、脳の機能は酔っぱらっているときと同じ程度まで落ちるのだそうです。そんな状況で良い仕事ができるのかはなはだ疑問です。

 

それでも長時間労働が無くならないのは、「長時間働くことは美徳」という日本的な考え方がまだまだ支配的だからだという気がしてなりません。

特に、経営層や管理監督者の中にはきわめてタフな働き方をしてきた方々が多く、自身が若かった時にモーレツに働いていたことを基準にして考える人が多いのです。残念ながら、上の立場の方たちが、長時間労働を心のどこかで是としているうちは、組織の雰囲気は変わりません。

「人事がうるさいから残業するな」というような指導になりがちで、時間内に効率的に働く環境を作ろうと本気で取り組むことがないようです。(次回につづく)

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2016.06.17更新

 

先日、東京大学で職場のメンタルヘルス専門家養成講座の同窓会がありました。私は第一期生ですが、今回は4期生が加わり、さらに大きな会として発展しています。

そこで、主任教授の川上憲人先生からストレスチェック制度が今後どのようになっていくかについての予想についてお話がありました。川上先生は「どこまで予言が当たるかはわからないけど」と、控えめに話してくださいましたが、私は大いに実現しそうだなあと思いました。

一つは、現行のストレスチェック制度では組織分析に基づく職場環境改善については「努力義務(やることが望ましいが、やらなくても罰則はない)となっていますが、これがおそらく今後「義務(やることが必須になる)化」されるだろうということ。

もう一つは、現在、従業員が50人未満の事業所についてはストレスチェックを行う必要がありませんが、これもおそらく今後義務化されていくだろうということです。

どちらも、働く人の健康を守るうえでは当然の発展と言えるでしょうが、事業者の負担は増えるため、実際には真面目にやるところと、形だけ最低限にやって済ますところと2極化していくのではないかと、私は予想しています。また、医師面談をきちんと行って、職場に結果をフィードバックできる産業医がどのくらいいるのかも心配な点です。というのも、今回のストレスチェック制度の施行に際して、ストレスチェックの実施者になるのが嫌だからという理由で辞めてしまう産業医が結構いるという話を耳にするからです。

ストレスチェック制度はうまく機能すれば従業員の心の健康増進、生産性のアップにつながることが期待できる可能性を秘めていますが、それも運用する事業者トップ層の考え方や、かかわる産業医の質によって有益なものとなるかは大きく左右されそうです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2016.05.30更新

 

昨年、50人以上の従業員がいる事業場では年に1回従業員にストレスチェックを実施することが法律で義務付けられました。多くの企業で今年が初めてのストレスチェック実施となるはずです。

 

ストレスチェック制度は働く人の精神的健康を向上させ、職場環境の改善を促すためのものですが、まだまだ、一般の方に十分に理解されてない面も多いと思われます。

 

よくある誤解は、この制度が精神疾患の早期発見のためのものであるというものです。現実には、この制度はあくまでも疾患の予防を目指すためのものであり、疾患をあぶりだすことを目的としてはいません。つまり、ストレスチェックで高いストレスにさらされていると判定された「高ストレス者」が、すなわち精神疾患というわけではありません。従業員の方々にご自身のストレス状況についてフィードバックして、気付きを促すことや、組織集団の分析結果を用いてストレス度の高い部署の環境改善を促すことが主たる目的なのです。

 

また、ストレスチェック制度では、高ストレス者と判定された場合、本人が希望すれば医師の面接指導を受けることができますが、このことに関しても十分な理解が必要です。面接指導をする医師とは、多くの場合、その事業所の産業医ということになりますし、面接指導を希望したことで、従業員の方の情報が会社には伝わることになります。このことを嫌って、高ストレスであるにもかかわらず、医師の面接指導を辞退してしまう場合がかなりあると予想されます。そうなると、本当はサポートが必要な方がフォローアップされなくなってしまうことが懸念されます。実は、ストレスチェック制度で規定されている医師の面接指導は辞退しても、通常の産業医業務の中で行われる従業員との相談の方で話をすることができるのです。こちらのルートであれば、自分が高ストレス者であることなどを会社に伝える必要はなくなりますので、よりプライバシーに配慮した形でフォローを受けることができます。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2016.02.23更新

 

前回の続きです。

3.課題遂行のためのテクニック
薬物療法以外で、できることは、前述したように目標を定めて課題を実行することです。
「技法」としては、考え方や行動のクセを変えるためなら認知行動療法、他人との関わり方やコミュニケーションの問題なら対人関係療法といったテクニックがあります。
目標や課題がどのようなものかに応じて、それらを使い分けることができます。
認知行動療法や対人関係療法がどのようなもので何をするものなのかは、課題が決めればきちんと治療者から患者さんに教えることができます。
しかし、そういう技法・テクニック以前に大事なことは、良好な患者-治療者関係です。
その中で、目標や課題を明確にして実行可能なやり方を工夫していけば、治療がうまくいく可能性は格段に上がります。
結局、これまでのことから明らかなように、課題を決めたり実行したりするのは患者さんが主役なのです。
現状が辛いのだとしたら、(当然好きで続けているわけではないにしても)患者さん自身が辛くなることを続けているのであって、人は自分を変えることでしか良くならないのです(変えると言っても現在の自分を「否定する」のではなく、「広げる」ということです)。
医者は患者さんが自らを変えていくお手伝いができるだけに過ぎません。

 

 

4.患者-治療者関係を見直してみるようにお願いする
もしも、これまで述べてきたことを患者さんにお伝えして、患者さんが治療者の言わんとすることをスムーズに理解できて、頑張る気になれそうなら、その患者-治療者関係は良好で、何も問題ありません。
ところが、一方で、そんなことを言われても困る、役に立つ気がしない、何となく不愉快だ、というような感じに患者さんがなるとしたら、その患者-治療者関係がうまく行ってないことを示しています。
それは、治療者である私が患者さんの気持ちをちゃんと聞けておらず、患者さんが私から尊重されている感じがしていないのに、私が患者さんに要求ばかりしている可能性が大きいということを意味しています。その場合は、目標や課題の話の前に、私は患者さんが私に対して感じている不満をきちんとお聞きしなければなりません。
言いにくくても率直に不満を話してください、と伝えます。そのやり取りを通して、患者さん自身が、私を自分の治療者として信用に足る存在か、共にやって行こうと思えるかを値踏みしてみるように重ねてお願いします。私は全然完璧な人間ではありませんし、治療者として未熟な面もまだまだあります。
きっと自分の知らないところで患者さんをがっかりさせたり、いらだたせたりしていることがあるのだと思うというようなことも話します。そして、それでも、私は患者さんが困難を乗り越えて、医療を卒業できるようにお手伝いしたいと思っているということを強調します。

このようなやり取りを患者さんと行って、治療関係を洗い直し、治療方針を立てなおそうと努力をします。
その結果、経験では半数以上のケースでは何らかの状況打開に至るようです。その一方で、残りのケースでは残念ながら患者さんの納得が得られず、治療中断や転院希望に至ります。
ただ、それでも、うまくいかないままズルズルと治療を続けるより、新たな治療者とやり直した方がいいのかもしれません。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2016.01.05更新

 

残念ながらベストを尽くしても、治療がうまくいかないときがあります。治療者と患者さんの協力関係がしっかりしていれば、何か打開策を見いだせることがほとんどですが、行き詰りは多くの場合、治療関係がうまくいってないことを意味します。そんなときに、当院で行っていることを紹介します。

 

1.まずは現在の状況の確認
残念ながら治療は行き詰っており、私が患者さんの力になることができていないと思うことを患者さんに率直に伝えます。同時に、その責任の多くは私にあること、何とか今の状況を打開したいと願っていることも言葉で伝えます。その一方で、患者さんが何について困っていて、どの点で私の助力を必要としているかについて私の中で明確ではなくなっていることを伝えます。表面的には「つらい」「眠れない」「対人関係がうまくいかない」などの訴えはもちろん分かっていますが、より具体的に、その解決のためにどのような課題を設定して、どんな方法で対処していけばいいのかがあいまいなのだと。これでは、診察のたびに、「つらい」「苦しい」「うまく行ってない」ということはお聞きできても、それらを解決していく話ができず、毎回の診察が一連の「シリーズ」ではなく、その場その場の「バラバラ」になって、治療効率が上がらなくなっているのだと説明します。

 

2.状況打開のために必要なこと
一般的に患者さんは多くの難しい問題を抱えていますが、問題を整理して、細分化し、取りかかりやすくすることが有用です。例えば、私の患者さんで、うつ気分を改善したいという訴えの方がいましたが、彼女の気分を改善させるために私たちが最初に取り組んだことは「できなくなっていた家事を少しずつ再開する」「運動習慣を作る」ということでした。どんな家事をどのくらい再開してみるか、どんな運動を何時にどのくらいやってみるか、ということを相談して具体的で分かりやすい目標を立てて、実行してもらい、次の診察で進捗を報告してもらいました。こうすることで、患者さんは取り組むべき課題がはっきりとして、何が出来たか・出来なかったが明確になるので、達成感を持ちやすいし、次に解決すべき問題もはっきりするのです。結局、この患者さんは抗うつ薬を使わずに気分の改善に成功しています。もちろん、すべての患者さんがこのケースのように簡単にいくわけではありませんが、具体的で実現可能な目標を設定し、そのやり方をはっきりさせることは治療の成否を左右する大切な要素です。このようなことを丁寧に説明したうえで、「治療目標」を共有したい旨を伝えます。それは漠然と「とにかくよくなりたい」のようなものではなく、今現在困っていることをどのように解決したいのかという治療上の具体的なニーズのことなのです。

 

例えば、気分を安定させるという「大きな目標」のためには、より具体的な「小さな目標」を一つずつクリアすることが必要です。いろいろな患者さんたちとやってきたことを参考に列挙してみます。
・規則正しい、生活リズムを確立する。
・アルコールをコントロールする。
・家族に対して本当の気持ちを伝える。
・運動習慣を作る。
・職場でのコミュニケーションを変えてみる。
・自分の考え方のクセを修正する。
・感情のコントロール法を学ぶ。
・自分が本当にやりたい仕事に転職する。
・忙しい中でも必ず、自分のためだけの時間を作る。
・イラっとしたときの行動を変えてみる。
・医師の指示に従って薬物療法をやってみる。
・仕事中心の働き方を変えて、余暇活動を増やしてみる。
・自分から友達を誘ってみる。
・職場のランチに無理に付き合うことを止めて、一人で食べてみる。

 

「大きな目標」を実現するために、それを細分化して、具体的な課題とし、実行可能なものから手を付けていくということです。

 

次回へ続く

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2015.11.18更新

アルコールは脳に作用する薬物です。人類は長い間、酒による「酔い」を楽しんできました。一方で、アルコールは使い方によっては健康を害する「毒」にもなります。酒造メーカーは売るために、アルコールの害にはスポットを当てませんし、一般の人はアルコールの害について学ぶ機会を与えられず、よく知らないまま飲酒を続けているのが日本の現状でしょう。

 

アルコールの害について分かっていることは以下の通りです。

①睡眠に与える影響:寝つきを良くする作用がありますが、耐性(クセになる)がつきやすく、睡眠の質を浅くし、睡眠時間を短縮します。

 

② しらふの時の不安・緊張を高める:アルコールは酔いの時は不安や緊張を軽減させる働きがありますが、リバウンドが大きいため、しらふの時は逆に不安緊張が高まります。

 

③ 長期的には抑うつ惹起作用がある:要するに、長く続けていると、気分が落ち込みやすくなるということです。

 

④さらに長期的には認知症を引き起こす:認知症の症状が出る前から、CTなどで確認すると脳の前頭葉と側頭葉の体積が減少していることが分かります。最終的には記憶力が著しく低下した状態になります。

もちろん、少しでも飲酒したら上記のような症状が出てしまう訳ではありません。

 

適度な飲み方というのは当然あるはずです。週2回連続して飲まない日を作ること、習慣的に飲む量は日本酒換算で2合以下にすることなどが、ぎりぎりの条件のようです。すでに、不安・緊張・不眠などの症状が一つでも起こっていれば、アルコールが脳に有害な影響を与えている可能性があります。

パニック障害、社交不安障害、うつ病、強迫性障害、双極性障害などの治療では、アルコールは改善を妨げる大きな要因になります。治療を受ける人は禁酒が原則です。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2015.07.29更新

 

上司から「適応障害なんて気の持ちようだ。メンタルの医者にかかると病気と洗脳されちゃうぞ」と言われた患者さんは、その後も同じ上司から「大人になれてないんだ。もともとそういうところがあるから不調になったとか言い出すことになったんだ」と責められたそうです。世間にはこのような対応をされる上司がまだたくさんいるようです。私は、単にこの上司を批判しようとは思いません。私が得ている情報は主として患者さん側から見た情報であり、もしかしたら、患者さんにも何かしら問題があることを私が理解できてない可能性もあるからです。また、もしかしたら、上司には上司なりの事情があって、このような厳しい言動になっているのかもしれません。

その一方で、適応障害を病気と考えるかどうか、私なりの考えをきちんと示しておかないと、上の上司のような人に傷つけられた人が混乱されると思いますので、以下に述べたいと思います。

 

1.ストレス反応は「質」の異常ではなく「量」の異常と考えた方が良い。
ストレスは誰にでもあります。ストレスがあれば嫌な気持ちがしたり、少し眠れなくなったり、いつものように楽しめなくなることは人間なら当たり前です。ただし、その程度があまりにも大きくなった場合は、「当たり前」ではなくなります。幻覚や妄想が出るような病気の場合は、軽くてもそういうものが確認できれば「病気」というのは分かりやすいはずです。普通の人には通常ないことが起こっているわけで「質的」におかしいと感じやすいからです。しかし、正常な人にもあって、連続的に量的に変化するものは、正常と異常の境界があいまいになります。例えば、血圧も連続的に変化する量です。正常血圧と高血圧の境界もそれほど明確な線が引けるわけではりません。基準はありますが、新たな知見があれば変わったりしますし。でも、200とかを超えれば誰から見ても異常なわけです。ストレス反応の程度も「量的」異常と考えれば、「誰にでもあることだから病気ではない」というのは雑な考えである訳です。そこで正常と「病気」の境目を、あいまいさを完全に排除することは出来ないけれど、設定する必要が出てきます。適応障害の場合は、症状のために日常生活や仕事に支障が出るレベルを超えることが目安になります。このレベルを超えたら「病気」として扱うことは妥当なことだと考えます。

 

2.その人が持っているストレス対処能力は個人差や環境に影響される。
生きている限りストレスフリーになることはあり得ませんが、多くの人は病気にならずに普通に生活していけます。それは、その人がストレスを処理できているからで、ストレス対処能力と呼びます。これは特別なことではなく、問題を整理して一つずつ解決する、誰かに相談して助けてもらう、気晴らしの活動をするとか、多くの人が自然にやっていることです。この能力には個人差があるため、Aさんには何でもないことがBさんには「病気」を引き起こすことになる場合があります。また、その人自身が例えば「誰かに相談する」という適切なストレス対処能力を備えていても、環境的に誰もサポートしてくれる人がいない状況だと、その相談するというストレス対処行動をとれなくなってしまうため「病気」に至ることもあり得ます。その人の個人状況や環境をよく考えずに、「甘え」「わがまま」「性格の問題」と決めつけることは非常に乱暴なことだと言えるでしょう。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2015.04.06更新

 

最近、当院の患者さんが上司から「適応障害なんて気の持ちようだ。メンタルの医者にかかると病気と洗脳されちゃうぞ」と言われたという出来事がありました。もちろん、私は適応障害が気の持ちようだとか、患者さんを洗脳しているなどと思ってはいませんが、今回は、その上司の方がなぜそのような考えになるのかを「相手の身になって」推測してみようと思います。

 

1.そもそもメンタル疾患について理解しようとしない。
その上司の方が生き抜いてこられた時代はおそらく、「つらいのは皆同じ。泣き言言うのはわがままだ」という風潮が強かったのかもしれません。目に見える怪我や内科・外科の病気しか認めないという人たちの中には「自分も苦労したんだから、お前も苦労して当たり前だ」という信条を持っている方が多いようです。この手の人たちにとってはメンタル疾患など贅沢病以外の何ものでもない訳です。

 

2.「適応障害はストレス反応、ストレスは誰にでもあるし気の持ちようで対処できる」と考える。
確かにストレスは誰にもあります。そして、どこまでのストレスに耐えられるか、どこからのストレスなら病気になるかなどははっきりした線引きが出来ません。同じストレスでも、乗り越えていける人がいる一方で、参ってしまう人もいる。となれば、「参ってしまう人が弱いからだ」と決めつけてしまうことは分かりやすい考え方です。

 

3.「精神科医は患者さんを甘やかして、病気を作り上げて金もうけしようとしている」と考える。
これは私たち精神科医も反省しなければいけない点があります。患者さんを甘やかすかどうかは別にして、きちんとした診察や診療をしていないという批判は全くの事実無根とは言えないからです。話をきちんと聞かずに何でもすぐに「うつ」にしてしまう医者、最初から多剤併用で薬ばかり出す医者、薬物療法以外には何もしない医者・・・そういう医者がありふれていることは他院から流れてきた患者さんの話から明らかです。私も他の医者のことばかり言えません。患者さんの問題解決にいつでも本当に適切な対応が出来ているのか、今後もまだまだ改善の余地はあるはずです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2015.03.02更新

部下の恐怖・欲望・嫉妬・競争心・虚栄心を刺激して動力にすることは危険です。これはついやってしまいがちですが、実はストレスに弱くする道。本当の意味ではやる気も出ません。
「今期のゴールを達成しないと後がないぞ」
「このままでは、○○君に負けるね」
「後輩の○○君の方がましだよ」
「君がちゃんとしないと皆に迷惑がかかるんだよ」など。
これに対して、部下の向上心・使命感・喜び・夢などを動力とすると生き生きと力を出せます。積極的に自ら進んでやるようになります。
しかし、「そんなことを言っても仕事は楽しいだけじゃない。仕事にストレスはつきものだし、喜びや夢だけで乗り越えられるほど甘くはない」と思う方も多いはずです。
実際、ストレスをバネにして活性化する人もいますよね。
では、ストレスに弱い人と強い人(鈍い人ではない)は何が違うのでしょうか?
また、部下に「お前はストレスに弱いから、もっと強くなれ」と単に叱責すれば強くなれるものでもないことは明らかです。ここで、キーとなる概念がSOC(センスオブコヒーレンス:首尾一貫感覚)というものです。SOCは人をストレスに対して強くする、いわゆる「元気にする力」であることが実証されています。

SOCは次の3つの要素からなります。
①把握可能感」ストレスとなることに直面した際に、自分にどんなことが起こっているのかを十分に説明できると思えること
②「処理可能感」自分はそのことを乗り越えられるだけの資源を持っていると信じられること
③「有意味感」そのことを乗り越えることが自分にとって意味のあることだと思えること
把握可能感がない状態とは、例えば、「こんなことをやるために入社したはずじゃなかった」「どうしてこんなに誰でもできそうな雑用ばかりなんだ」「なんで俺が怒られなくっちゃいけないんだ」といった場合です。
処理可能感がない状態とは、「こんな状況を乗り越えるなんて、自分には出来そうもない」「誰に相談したらよいか分からない」「上司に相談してもどうせ何もしてくれないだろう」といった場合です。
有意味感がない状態とは、「こんな辛い状況を何で我慢しなくちゃいけないんだ」「こんな仕事を続けて何になるんだ」「ずっとこの会社でやっていって自分の人生に意味があるのか」といった場合です。
これらは、独立した要素ではなく、相互に絡み合っています。ストレスフルな状況に直面したときに、自分に起こっている困難がどういうことなのか説明でき、自分にはそれを乗り越える能力やサポートがあると感じ、それを乗り越えることが自分のキャリア人生上意味があることだと思えれば、そのストレスは逆にヤル気へと変えられる訳です。

把握可能感を育てるには
まず、困難を抱えている部下と良いコミュニケーションを通じて、何が起こっているのかを把握しましょう。雑用のような小さな仕事でもその意味を教えましょう。ジョブクラフティングと言って、一見つまらなそうに見える仕事でも創意工夫して意味づけを行うことが生産性向上につながることが分かっています。自分の似たような経験を話してあげましょう。そして、日常の雑事で疲れた心に「夢(長期的な共通の目的)」を思い出させるような会話をしましょう。今直面している困難が夢へのステップであることを意識させることがポイントです。

処理可能感を育てるには
実際に「能力があるか」とか、「サポートしてくれる人がいるか」という事実よりも、本人が「ストレスフルな状況でも、自分は自分の工夫や努力、それにサポートしてくれる人たちの援助を受けながら、何とか乗り越えられるだろう」という見通しを持てるかが大事です。普段から、部下のできていることに目を向けて肯定的に認めることが大切です。何か気になることがないか?と、上司の方から時々尋ねてあげること。「困ったことがあったら相談しろ」では相談しにくいものです。相談されたときは、よく話を聞き、上司が回答と与えるのではなく「それでどうすればいいと思う?」と質問します。

有意味感を育てるには
ずばり、「報酬」が必要です。しかし、単なる業績評価・給料では有意味感を持たせるのに不十分です。「自分のやっている仕事にはこんな意義がある」という感覚が必要です。そのために大切なものが、組織に共通した長期目標である「夢」です。上司からの評価も、冷たい成果主義的評価ではなく、「お前は大事な人間なんだ」「お前の成長がうれしい」という心あるメッセージであることが重要です。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

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