2015.03.02更新

部下の恐怖・欲望・嫉妬・競争心・虚栄心を刺激して動力にすることは危険です。これはついやってしまいがちですが、実はストレスに弱くする道。本当の意味ではやる気も出ません。
「今期のゴールを達成しないと後がないぞ」
「このままでは、○○君に負けるね」
「後輩の○○君の方がましだよ」
「君がちゃんとしないと皆に迷惑がかかるんだよ」など。
これに対して、部下の向上心・使命感・喜び・夢などを動力とすると生き生きと力を出せます。積極的に自ら進んでやるようになります。
しかし、「そんなことを言っても仕事は楽しいだけじゃない。仕事にストレスはつきものだし、喜びや夢だけで乗り越えられるほど甘くはない」と思う方も多いはずです。
実際、ストレスをバネにして活性化する人もいますよね。
では、ストレスに弱い人と強い人(鈍い人ではない)は何が違うのでしょうか?
また、部下に「お前はストレスに弱いから、もっと強くなれ」と単に叱責すれば強くなれるものでもないことは明らかです。ここで、キーとなる概念がSOC(センスオブコヒーレンス:首尾一貫感覚)というものです。SOCは人をストレスに対して強くする、いわゆる「元気にする力」であることが実証されています。

SOCは次の3つの要素からなります。
①把握可能感」ストレスとなることに直面した際に、自分にどんなことが起こっているのかを十分に説明できると思えること
②「処理可能感」自分はそのことを乗り越えられるだけの資源を持っていると信じられること
③「有意味感」そのことを乗り越えることが自分にとって意味のあることだと思えること
把握可能感がない状態とは、例えば、「こんなことをやるために入社したはずじゃなかった」「どうしてこんなに誰でもできそうな雑用ばかりなんだ」「なんで俺が怒られなくっちゃいけないんだ」といった場合です。
処理可能感がない状態とは、「こんな状況を乗り越えるなんて、自分には出来そうもない」「誰に相談したらよいか分からない」「上司に相談してもどうせ何もしてくれないだろう」といった場合です。
有意味感がない状態とは、「こんな辛い状況を何で我慢しなくちゃいけないんだ」「こんな仕事を続けて何になるんだ」「ずっとこの会社でやっていって自分の人生に意味があるのか」といった場合です。
これらは、独立した要素ではなく、相互に絡み合っています。ストレスフルな状況に直面したときに、自分に起こっている困難がどういうことなのか説明でき、自分にはそれを乗り越える能力やサポートがあると感じ、それを乗り越えることが自分のキャリア人生上意味があることだと思えれば、そのストレスは逆にヤル気へと変えられる訳です。

把握可能感を育てるには
まず、困難を抱えている部下と良いコミュニケーションを通じて、何が起こっているのかを把握しましょう。雑用のような小さな仕事でもその意味を教えましょう。ジョブクラフティングと言って、一見つまらなそうに見える仕事でも創意工夫して意味づけを行うことが生産性向上につながることが分かっています。自分の似たような経験を話してあげましょう。そして、日常の雑事で疲れた心に「夢(長期的な共通の目的)」を思い出させるような会話をしましょう。今直面している困難が夢へのステップであることを意識させることがポイントです。

処理可能感を育てるには
実際に「能力があるか」とか、「サポートしてくれる人がいるか」という事実よりも、本人が「ストレスフルな状況でも、自分は自分の工夫や努力、それにサポートしてくれる人たちの援助を受けながら、何とか乗り越えられるだろう」という見通しを持てるかが大事です。普段から、部下のできていることに目を向けて肯定的に認めることが大切です。何か気になることがないか?と、上司の方から時々尋ねてあげること。「困ったことがあったら相談しろ」では相談しにくいものです。相談されたときは、よく話を聞き、上司が回答と与えるのではなく「それでどうすればいいと思う?」と質問します。

有意味感を育てるには
ずばり、「報酬」が必要です。しかし、単なる業績評価・給料では有意味感を持たせるのに不十分です。「自分のやっている仕事にはこんな意義がある」という感覚が必要です。そのために大切なものが、組織に共通した長期目標である「夢」です。上司からの評価も、冷たい成果主義的評価ではなく、「お前は大事な人間なんだ」「お前の成長がうれしい」という心あるメッセージであることが重要です。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

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