2014.12.08更新

 

生活習慣病としての気分障害③

うつ病や双極性障害といったいわゆる気分障害と現代人の生活習慣との関係について書いてきましたが、最終回として飲酒のことを取り上げたいと思います。
結論から言ってしまうと、酒は気分障害の治療には有害です。いくつかの理由がありますので整理してみましょう。

 

①睡眠の質を悪化させることを介して
アルコールは寝つきを良くする作用は確かにありますが、深い睡眠を維持することにはマイナスに働きます。途中で目が覚めたり、浅い眠りになったりしてしまいます。睡眠が悪化すれば、うつ病や双極性障害になりやすいことは統計的な研究から明らかにされており、不眠症患者では健常者に比べて約2倍気分障害になりやすいことが分かっています。

 

②アルコールの直接作用として
アルコールは一時的には酔いという体験をもたらしますが、それとは別に習慣的に摂取すると、神経系への直接的な作用として、抑うつや気分変動をもたらす可能性があります。これは酔いとは別な減少で、飲酒後の数時間に限られるわけではなく、むしろ、酔っている時には目立たなくなることがあります。そのため、アルコールと気分の悪化を結び付けられずに、自己治療として飲酒して、さらに悪循環に陥ることがあります。

 

③治療薬の効果を減弱すし、副作用を出しやすくする
アルコールは上記の①、②の作用により、治療薬の効果を弱める可能性がある上に、薬物代謝を促進して、必要な薬の血液中の濃度を落としてしまう可能性もあります。また、中枢神経を抑制するような副作用が強く出てしまう可能もあります。

 

有害なことは分かっても、酒が唯一の楽しみだから止めたくないとおっしゃる方もいます。もっともなことと思います。唯一の楽しみを奪われたら大変ですから。しかし、ご本人も本当は心の奥で酒に頼る生き方は良くないと思っているものです。単に楽しみを我慢するというより、積極的に他の支えを見つけることが必要かもしれません。

 

実際の治療で困るのは、仕事上の酒の付き合いをどうするかということです。最初から飲めないというイメージがついている人ではなく、それまでよく飲んでいた人だと周囲への説明も大変です。メンタルの病気を隠したい場合は、「肝臓の数字が悪くなった」「尿酸が高くて医者から控えろと言われた」など身体的な理由を嘘でもいいので使うようにアドバイスしています。完全に飲まないということがやりにくい場合は、「乾杯の1,2杯だけにしてあとはノンアルコールで」というアドバイスもしています。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2014.10.30更新

生活習慣病としての気分障害②

うつ病や双極性障害といったいわゆる気分障害と呼ばれる疾患は、現代人の生活習慣とも密接に結びついている面があり、最も大事なものはおそらく、睡眠時間や睡眠覚醒リズムの問題でることを前回お伝えしました。

 

今回は、「うつ」と運動の関係についておつたえします。

 

かなり昔から、運動には「うつ」を改善する効果があることが知られており、近年ではその科学的根拠となる事実が理解されています。
その一つが脳由来神経栄養因子(BDNF)です。BDNFは脳の神経細胞を刺激して活発にしたり、神経新生(新たな神経細胞を生み出し成長させること)に関わっている物質で、抗うつ薬の効果の少なくとも一部はこのBDNFを増加させることによるものであることが示されています。
簡単に言ってしまえば、運動すると脳の中でBDNFという神経細胞を元気にする物質が増えて、そのことは抗うつ効果を持つであろうということです。事実、週3回、30分のウォーキングをすると、軽症うつ病では抗うつ薬投与に匹敵する改善効果があるだけではなく、再発リスクも薬物療法のみの群と比べて3分の1と少なかったという報告があります。この例のように、必ずしも激しい運動は必要なく、散歩でも効果が期待できるのです。

 

「うつ」の症状が強いときは、運動する気力さえ湧かないわけですから、治療に使うには工夫が必要ですが、まずは「予防的な効果」はもっと注目されてよいと思います。
おそらく、一人で黙々とトレーニングするよりも、気を許せる仲間と楽しみながら定期的に運動をすることが最も長続きするやり方と思われます。
私が産業医で関わっているある工場では、従業員の運動量が全国平均を下回っています。地方のため、通勤や日常生活が車中心であることが最も大きな原因のようです。
職場の限られた時間で十分な運動をやっていただくのは限界があり、せめてもと昼休みに体操することを奨励していますが、なかなか浸透しません。「楽しくやる」という要素が足りないせいだと思っていますが、まだ良い解決を思いついていない状況です。

 

「運動する時間が取れない」という訴えも患者さんからよくお聞きします。自分自身を振り返っても、普段は仕事で時間を取られてしまい、運動の時間を捻出することは難しいなと感じます。
しかし、短い時間で効率的に運動する方法もない訳ではありません。それは、登りの坂道や階段を利用するやり方です。今はエスカレーターが普及していますが、足腰に問題なければ、階段を使おうということです。
私は山登りの前の2週間は、クリニックのビルの1階から10階まで階段で登る練習をします。
かかる時間は10分以内ですから、これなら昼休みにもできるわけです。下りは膝に負担がかかりすぎることがあるので、登りだけにするのが安全です。ただ、短い時間でやれるのはいいのですが、あまり楽しくないことが欠点です。

 

日本橋メンタルクリニック
院長 小澤公良

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2014.09.17更新

 生活習慣病としての気分障害①

うつ病や双極性障害といったいわゆる気分障害と呼ばれる疾患は、現代人の生活習慣とも密接に結びついている面があり、最も大事なものはおそらく、睡眠時間や睡眠覚醒リズムの問題であることを前回お伝えしました。

今回は、「うつ」と運動の関係についてお伝えします。

良質な睡眠を十分な時間取ることが大切なのは異論がないところだと思います。
しかし、日本人の平均睡眠時間は過去50年間で1時間減っているという統計があります。
ヒトという種の生物学的な性質が変わるには50年というのは短すぎますから、これは社会的な要因が大きいと言えましょう。
要するに、我々現代日本人は本来体が必要としている分よりも平均1時間短い睡眠で何とかやっているということになります。
毎日1時間睡眠不足が慢性的に続けば脳の機能に影響を与えることは十分に考えられます。
事実、1週間だけ睡眠不足の状態になっただけで日中の作業能力はテストで有意差がつく程度に低下したという報告もあります。さらに、注意すべきなのは、この実験ではその後3日間十分な睡眠をとらせても、作業能力が元のレベルに回復しなかったということです。
働く人の多くが平日は睡眠不足でも、土日にため寝して取り戻せると考えていますが、科学的な実験による結果からは2日どころか3日でも取り戻せないということらしいのです。いつの間にか知らずに脳の疲労が蓄積していくようなことが起こっているかもしれません。
また単純な睡眠時間よりも、睡眠の質やリズムも重要です。
我々の睡眠リズムはメラトニンという脳内物質で調整されていますが、夜間に強い光を浴びてしまうとメラトニンの分泌が悪くなってしまうのです。現代の街中は場所によっては夜中でもかなり明るいですし、夜遅くまで仕事をする、テレビゲームをする、スマホの画面で作業をするという行為でも強い光刺激を受けることになります。
月明かりくらいしかなかった時代に比べれば、我々の体はメラトニンがかなり分泌しづらくなっているかもしれません。
メラトニンの分泌が悪くなるとリズムが崩れるのに加えて、疲労回復に必要な深い睡眠が減少することが分かっています。
現実に、当院に受診される双極性障害の患者さんは発病前に過重労働の時期があって、夜遅くに短い睡眠だけとるような生活を長く続けていた方が本当にたくさんいます。

睡眠の問題は発病にからんでいるだけではなく、治療上も大切です。うつ病や双極性障害の治療では、生活習慣を見直し、睡眠覚醒リズムを整え、可能な限り質の高い睡眠を十分に取ることが必要です。

生活習慣病、気分障害でお悩みなら東京都中央区「三越前駅」すぐの心療内科
日本橋メンタルクリニックへご来院ください。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2014.06.02更新

うつ病の再発予防

辛い病気を経験すれば、2度とこんな状態になるのはゴメンだと思うのが人情でしょう。うつ病も辛い病気であることは間違いなく、よく患者さんからも再発への不安の言葉をお聞きします。

 現在、うつ病の再発については、どれだけのことが分かっているのでしょうか?

まず、知っておくべきこととしては、うつ病は再発回数が多くなればなるほど再発しやすくなるということです。ですから、再発を防ぐことには大きな意味があると言えます。ここで、再発について二つことを区別しておかなければなりません。一つは、うつ病としてのエピソードが完全に終わった後の「真の再発」です。もう一つは、エピソードが終わり切っていない場合の症状のぶり返しで、本来は「再燃」と言われるべきものです。

再燃は症状がある程度良くなっているが、脳の中ではまだ本来の状態に回復していないために起こります。このことは、残存症状が少しでも残っていると再燃しやすいことや、維持療法を短期間で止めてしまうと再燃しやすいことから明らかです。最近の脳機能を画像化する研究では、自覚的症状がなくなった後も半年程度は脳の情報処理が正常化しておらず、ある意味「負荷のかかった状態」であることが示されています。再燃を防ぐためには、とにかく残存症状をなくすまで治療の手を抜かないことと、維持療法をしっかりと行うことです。維持療法の期間は初回エピソードなら症状がなくなってから最低半年は必要です。

では、真の意味の再発を防ぐ手段は何でしょうか?日常生活習慣とストレスコントロールは役に立つというエビデンスがあります。日常生活では、規則正しい生活リズム、バランスのいい食事、良質な睡眠、酒を控えること、適度な運動習慣が大事でしょう。当たり前と言えば当たり前のことばかりですが。ストレスコントロールとしては認知行動療法や対人関係療法と言った非薬物療法が使えそうです。再発への不安が強い方や、2回目以降のエピソードを経験された方は、積極的にこれらを利用しても良いでしょう。うつ病の症状が辛いときではなく改善した後ならば、市販のテキストを使って自習するだけでも実行可能でプラスだと思います。完全に再発を防げなくても、経過を良くすることはできる可能性もあります。

 

最後に、再発予防という意味からはずれてしまいますが、再発という現象がありうることを知ったうえで、再発兆候があれば速やかに医療機関に受診することがとても大事です。再発が嫌だという気持ちから、受診してそう言われてしまうことが怖くなり、ぎりぎりまで我慢してしまう方が時々いらっしゃいます。治りが悪くなってしまう可能性があるので、これはもったいないです。心配なことがあれば早く受診して、医師と相談してください。再発ではないという場合もあるのですから、早いに越したことはありません。うつ病

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2014.03.03更新

病気か甘えか?②
職場で過重労働があり、周囲のサポートもなく参ってしまう・・・こういうパターンの適応障害の方が結構います。
うつ病というほど強い落ち込みが持続しているわけではなく、職場を離れれば比較的元気になり友人といるときなどは普通に振舞えたりするので、本人も周囲も「甘えているだけではないか?」と不安になることがあります。
「周りも頑張っているから自分だけ頑張れないのはおかしい」と考えたり。本来、辛い状況であれば、その状況をどのように打開するか、結局自分はどうしたいのか、ということをはっきりさせなければ解決できません。
しかし、適応障害になってしまうと脳の機能が落ちて、この「自己決定」はほぼできなくなります(例外はあります)。
休養し、規則正しい生活と自分の好きな活動をさせると、徐々に自己決定する力が戻ってきます。大半の方は薬を使わなくても回復します。
すると、問題が整理されて、自分がどうしたいかがはっきりしてきます。
過重労働のせいだと思われていたことの裏に、本当はもっと違うやりたいことがあったことに気付くこともあります。
こういうプロセスを見ていると、やはり「病気として扱う」ことが必要かつ有用に思います。
もしも「甘え」とするなら、参っている状態でも自分の問題に向き合うように促し、自分で解決するように強いるということになるのでしょう。
しかし、実際にはそれはうまくいかずただ混乱するだけのことが多いのです。
当然、ストレスがかかっても皆が病気になるわけではないのですから、その人のストレス対処能力には何かしらの問題があると考えるのは当然ですし、その分、本人にも責任はあると言えます。
でも「甘え」と断じることはそこに向き合うことにつながるとは言えません。当院ではある程度回復したら、将来繰り返さないためにはどうしたらよいか、「振り返り」という作業を通して、ご自分の問題にも向き合っていただいています。ただ、それは行う時期が大事で、参っている最中にはできないことが多いのです。

それでは「失恋してつらい」という理由で受診された場合などはどうでしょう?医療の問題ではないことは当然です。
それでも、こんなことで受診するな!という態度を取られたらもっと落ち込んでしまうでしょう。
叱責されて立ち直れる人ならそもそも医療機関に助けを求めませんし、辛いときに叱責されて奮起できるような人は実際にはごく少数なのではないでしょうか。
私は、じっくり話を聞いたうえで、「病気ではないので治療では解決できない」と告げます。
しかし、眠れなくて生活や仕事に支障が出ているなら、そのことには薬で対処できると保証してあげます。その人が持っている人間関係のサポートを受けるように促します。
そして、つらいだろうけど仕事にはきちんと行くように話し、その方が結局は回復が早いと説明します。「病気」と認めることはしないけれど、「甘え」と断じることもせず、できることとできないことを伝えて、本人がつらさを乗り越えやすくするお手伝いを、少しだけですが、させてもらうという感じです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2014.02.25更新

病気か甘えか?①

これは「病気」なのですか?それとも「甘え」なのですか?というような質問を受けるのは、医者の中でも精神科医くらいでしょう。患者さんの周囲の人たちからだけではなく、当事者である患者さんからもこの質問をされることは結構よくあります。

そもそも「病気」とは何でしょうか?分かりやすいのは、原因診断ができる場合ですね。
健康な人にはない異質なものやプロセスが確認できればいいわけです。
例えば、結核菌が肺に病巣を作っていて、そのことから出ている症状を合理的に説明できるとか、がん細胞の塊があって・・・とか。あるいは、アレルギー反応のように、本来体が持っている機能だけれども、不適切かつ過剰にそれが起こってしまうとか。こういうものは病気か病気でないかはっきりしています。

一方で、心の病気と言われているものはどうでしょうか?いまだに原因診断はほとんどできない状況です。
もちろん、認知症のように脳細胞自体が変性してしまうことが分かっている疾患が例外的にありますが、たとえば「うつ病」などは現在原因不明です。
「適応障害」は「明確なストレス」が原因と定義されていますが、「嫌なことがあれば多かれ少なかれ誰でも気分が悪くなる」という正常心理の延長線にあり、どこから「病気」として扱うかはかなり恣意的です。
一応「本人が相当苦しんでいて日常生活や仕事に支障が出ていること」が境界線となりますが、そもそも主観的な苦しさは客観的に測定できませんし、支障が出るのも本人のやる気次第と思われてしまう余地はありそうです。

現在、世界的に精神科の診断は「症状の数・組み合わせ」で定義されています。
原因診断ができないものがほとんどなので当然ですね。しかも、症状には主観的なものもかなりありますから、診断基準に当てはまるから病気と言われても納得感が得にくいでしょう。
私は本来、精神科の病気は正常から病気の間がグラデーションになっていて、症状がいくつ以上か以下かでスパッと切れるわけではなさそうに感じています。

病気かどうか判断する際に、まずは病気と診断することそれ自体が「その人にとって治療的であるべき」というのが今のところ私の考えです。
どういうことかというと、①苦しい状況にいること②その状況に好きでなったわけではないこと③自分の気の持ちようや努力で(少なくとも短期的には)状況を改善できないこと、などを認めてあげることで、その人が不毛に自分を責めたり周囲を責めたりせず、現実的な問題解決に向き合うゆとりを取り戻す手伝いをすることです。
甘えではないか?という疑問は病気と診断すると本人が果たすべき責任から不当に逃れられるのではないかという懸念と思われます。私は病気と認めることが必ずしも病気を免罪符としてしまうことにはならないと思っています(確かに難しいケースはありますが)。
具体例は次号で挙げてみたいと思います。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2014.01.22更新

復職判断の難しさ

休職して治療して徐々に辛い症状がなくなってくると、次に来るのは現実的な不安です。
それは、いつ仕事に戻れるのか?とか、戻ったあと果たしてやっていけるのだろうか?という内容です。

この時期にはもう日常生活上、大きな支障がなくなっているので、患者さんは焦りやすくなります。
「もう大丈夫なのに休んでいるなんて、怠けているだけなのではないか」という思いが強くなる人もいます。
一方で、休職中という負荷の少ない生活で目立った問題がないことは、仕事ができることとイコールではありません。
働くということは、日常生活で問題がないということのさらに一段上の回復度が必要なのです。

復職可能の最低限必要な条件として、当院では以下のことを目安にしています。
①生活リズムが安定している。働いているときと同じ。
②睡眠・食事(3食)が十分にとれる。
③日常生活の家事・外出・人との会話は全く問題ない。
④図書館などに模擬的な出勤をして、6時間以上過ごせる。週5日。
⑤読書など2時間以上休まずに集中が続けられる。
⑥毎日、1時間ほどの散歩を出来る体力がある。
⑦通勤に必要な交通機関に問題なく乗れる。
⑧復職したいという意思が十分にある。
⑨以上の条件を満たせる状態が2週~1ヶ月以上継続できていることに加えて、以下の「振り返り」が冷静にできること。
(「振り返り」とは・・・自分が不調になった要因について、外的(環境的)要因と内的(自分自身の要因)に分けて整理すること、かつ、それらの要因に対して復職後どのように対処するか対策を立てられること。また、それ以外にも起こりうる問題をあらかじめ予想して対策を立てることが出来ること。)

それでも、正直なところ、100%確実な復職判断はできません。
万全を尽くしたと考えられる事例でも、再休職になってしまう場合があるからです。
いろいろな医療機関がリワークプログラムなどを通して、この難しい判断の確実性を上げようと努力していますが、やはり100%のものはないのが現状です。

そのため、復職に対しては公平で客観的な手続きを踏むことが最善となります。復職の難しさ 心療内科、東京 日本橋メンタルクリニック
復職の難しさ 心療内科、東京 日本橋メンタルクリニック

復職の難しさ 心療内科、東京 日本橋

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2014.01.04更新

当院は、働く人のメンタルヘルスと仕事の両立をめざすクリニックですが、決して万能ではありません。敢えて、「できないこと」を挙げてみます。

①入院施設がありません。
 医者にかかることに激しく抵抗される方、反社会的な行動の認められる方、自傷行為の頻発している方、自殺の危険性が高い方(最近自殺未遂があった方など)、食事摂取がほとんどできない方、こういった方は入院が必要な可能性が高いので、初めから入院施設のある医療機関にかかることをお勧めします。

②大量服薬された方は治療継続できないことがあります。
 薬の大量服薬がありますと、以後の薬の処方はできなくなります。背景に自殺の意志がわずかでもあった場合には、安全に治療を行っていただくため、入院施設のある医療機関へ転院していただきます。その場合、当院では提携している病院がないため、転院先はご本人・ご家族に選んでいただきます。

②てんかん は専門外です。
 てんかんの方は、脳波検査などの機器がそろった医療機関の利用をお勧めします。

③発達障害は得意分野ではありません。
 アスペルガー症候群、ADHDなどの発達障害系の疾患については、出来る範囲で診断と治療を行っていますが、率直に申し上げて得意な分野とは言えません。あらかじめ、発達障害の疑いがあると分かっておられる方の場合は、初めからそれらを専門としている他の医療機関をご利用されることをお勧めします。リタリンの処方は行っておりません。


④時間指定予約はできません。
 当院の予約制は1時間の時間枠をお取りするものです。待ち時間が短くなるような工夫はしていますが、正確な診察時刻の指定はできません。時間指定予約を希望される方は、他の医療機関のご利用をお勧めします。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.12.10更新

 

発達障害 大人になってから問題となるケース②

大人になってから診断される発達障害の患者さんは、大きく分けて、注意欠陥多動性障害(ADHD)タイプかアスペルガー症候群タイプかのどちらかになります。

ADHDタイプの患者さんは、対人接触は比較的良好で、表情や口調も割と自然です。
しかし、診察室に入ると着席する前から話し出したり、早口で、こちらの話が終わらないうちに返答を述べ始めたりします。座っていても、手や足を細かく動かしていることも良く見かけます。
子供のころから忘れ物や失くしものが多かったと言い、成人してからも、財布や携帯など大事なものを繰り返し失くしていたりします。彼らが困るのは、なんといっても、仕事で不注意によるミスを繰り返してしまうことです。
やや単調で、同時にいくつかのことをやらなければならないような場合、最もミスが発生しやすい傾向があります。
そのため、上司や先輩から何度も叱責され、同僚からも冷たい目で見られてしまう・・・という状況で自信を無くしてしまうことがままあります。
しかし、ADHDタイプの人には近年有効な薬物が使えるようになり、うまくいくとかなり症状を軽減できるようになりました。また、現代は電子機器が発達していますから、スケジュール管理などをしやすいスマホのアプリなどを上手に使用することで、適応力の改善を図ったりもします。

アスペルガー症候群タイプの人は、どことなく対人接触がぎこちなく、不自然な印象を与えることがあります。子供のころから集団生活や友人関係で浮いてしまうことがあり、いじめられた経験がある人が多いようです。
不注意によるミスはそれほど多くないのですが、何かに過集中してしまうと、他のことが見えなくなってしまうことがあります。
言われた話を理解するよりも、文章に書いてもらったものを読むほうが理解しやすいという視覚言語優位の情報処理特性がしばしば見られます。
アスペルガー症候群タイプの人は、自分の得意な仕事をコツコツやらせてもらえる環境だと、非常にクオリティの高い結果を出せる一方で、他部署との対人折衝や部下の気持ちを汲みながらマネジメントするような課題に直面すると全く立ち行かなくなってしまうことがあります。
そのせいでうつ病や不安障害のような症状を呈することが多いようです。アスペルガー症候群タイプの場合は、それ自体に有効な薬物はなく、本人の特性を理解したうえで環境の方を本人に合わせていく環境調整が主体になります。
ただ、これを行うにはどうしても職場側の理解と協力が必要なのですが、いまだに「発達障害」という診断は偏見が強く、職場に伝えることに慎重にならざるを得ない現実もあり難しいところです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.09.09更新

 

発達障害は脳の発達に何らかの問題があり、その働き=特性に偏りが生じた状態です。得意なことと不得意なことの差が激しいという特徴があり、不得意なことは以下の領域に出やすいようです。

①社会的コミュニケーションの障害 言葉のやり取りよりも、いわゆる暗黙の了解とか、状況に応じた臨機応変な態度など、非言語的コミュニケーションがうまく理解できない。冗談や皮肉を言葉通り真に受けてしまう。自分ではていねいに話しているつもりでも相手から失礼だと言われたりする。

②注意力の調節障害 注意力の持続、切り替えなどがコントロールできず、不注意によるミスを繰り返したり、一方で、一つのことに過度に集中しすぎてしまったりする。

③自己コントロールの障害 時間管理や金銭管理がうまくできず、夜遅くまでゲームをして朝起きられなくなったり、衝動的に買い物をして借金を背負ったりする。しかも、一度の失敗で懲りて再学習するということができない。

④こだわりが強く、融通が利かない あまり本質的ではない些細なことにとらわれて、こだわってしまう。例えば、書類の出し方のような形式にとらわれて、急ぎの例外的な事態が生じても柔軟に対応しないため周囲から嫌がられてしまう。

他にもいろいろあります。発達障害の人の特性の偏りは人により様々なので、ここに挙げたものはうちのクリニックでよく見かける代表的なものにすぎません。

障害の程度が軽ければ学生時代にはそれほど問題とならないのですが、職場という大人の世界に入ってから不適応を引き起こしてしまいます。さらに、より障害が軽いケースでは、部下として自分の仕事をコツコツやっているうちは優秀だったのに、管理職になって対人折衝が増えてから破綻してしまったという場合もあります。

発達障害が背景にある適応障害の治療では、まず患者さん本人が自分の脳の特性に偏りがあるという現実と向き合うことが必要です。患者さんの中には、原因を周囲に押し付けて過度に多罰的になったり、逆に「自分は何をやってもうまくいかない」と過度に自己評価を低下させたりしてしまう人がいますが、どちらも不毛です。

ご本人の障害受容がスムーズにいくように援助するのが治療者の腕の見せ所ですが、現実には難しいことが結構あります。発達障害の人の特有のこだわりの強さからこちらの言うことを聞いているようでも、実は自分の言いたいことを言っているだけ・・・となりやすいのです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

前へ 前へ
TEL:03-3243-2772
ご予約方法はこちら
footer_tel_sp.png
ご予約方法はこちら