2013.07.29更新

うつ病学会での「新型うつ病」

7月19、20日に九州小倉で日本うつ病学会が開催され、そこで「新型うつ病」に関するシンポジウムが行われました。学会としてきちんとした考えを示すという趣旨だったようですが、残念ながら議論としては中途半端に終わってしまったという印象です。

シンポジストの先生方が一致していたのは「新型うつ病」という医学的診断名は存在しないということでまあ当然です。もう一つ一致していたのは、いわゆる「新型うつ病」様の患者さんは何かしら困難を抱えているのであり援助を希求しているのだから、しっかりと治療すべきだということでした。世間ではいわゆる「新型うつ病」など甘えであって容赦ない対応が必要だということを言う人たちがいますが、実臨床に取り組んでいる先生方は「困っている人たちに何かできることをしたい」と同じように感じているのと思います。

一方で、いわゆる「新型うつ病」の本体は何かということになると、「病気か病気じゃないかの議論は不毛」「さまざまな診断が混在している」「本質的にはうつ病であり表現型が時代によって変わった」など様々で議論がかみ合ってないようでした。私としては、時に診断書を出して休ませたり健康保険で治療をしたりするのですから「病気か病気じゃないかの議論は不毛」というのはちょっとおかしい気がします。いわゆる「新型うつ病」にかなり含まれていると想像される、軽度発達障害やパーソナリティの偏りや未熟さがが背景にある適応障害、さらには、双極性障害などは、きちんと診断しないと治療方針が立ちにくいですから、本体、要するに診断の問題は重要だと思います。

医者がきちんと診断して、医療が主としてカバーできるものをきちんと峻別したうえで、おそらく残る問題は「組織が人を育てるとはどういうことか?」ということなのではないかと想像しています。そもそも「新型うつ病」というのは職場のメンタルヘルスで対応困難事例として出てきた概念です。産業医として直接いくつかの事例に関わった経験から、そのようなケースでは、問題が小さかったうちに組織がその人を育成できなかったばかりか、対立関係に発展してこじれているというものでした。どちらが悪いという議論にしてしまうと、それこそ不毛です。組織が育てにくいタイプの人が実際にいる、そういう人たちをどのように育てていくのがいいのか、どうしてもその人と組織の期待することがずれていて修正不能の場合はどういう手続きで辞めてもらうのか(辞める方が双方にとって良い場合も確かに存在します)、こういったことが求められているのではないでしょうか。

うつ病の治療なら・東京 日本橋メンタルクリニック

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.07.11更新

強迫性障害、曝露反応妨害法の工夫②

強迫性障害の治療法の一つである曝露反応妨害法に関する工夫について、前回の続きです。

工夫4.スッキリ感や安心感を「直接」求めない
強迫観念によって引き起こされた不安やもやもやした気持ちを「即効的に」解消しようという誘惑から強迫行為をさせられてしまうという病気の構造をしっかり理解しましょう。スッキリ感を求めることは病気の罠です。スッキリしないまま次の行動に移りましょう。時間がたてばもやもやした気持ちや不安は必ず落ち着いてきます。

工夫5.病気と取引しない
例えば、確認強迫で「後でまとめて確認するから」と自分を「納得させて」、目先の強迫的確認を逃れるというテクニック(?)を使う人がいます。病気をよく理解できていれば、これがなぜいけないか分かりますね。これは形を変えた強迫行為ということです。しかも、本人がその自覚を持てず、頑張って強迫行為をしていないと思ってしまうのでたちが悪いのです。一生懸命、行動療法を頑張っているのに成果が感じられないという人はこの点を見直してみると新たな展開があるかもしれません。

工夫6.病気はしつこいので、病気よりもしつこくなる
強迫性障害という病気は本当にしつこい病気だと思います。乗り越えたと思っても、繰り返し病気の罠に落ちてしまうようなところがあります。いっそ、病気はとてもしつこいのだと割り切ってしまいましょう。そうすれば、行動療法で何度か失敗しても「病気はしつこいのだ。簡単には治せなくて当然だ」と、そんなに気にしないで「しつこく」やり直せるのではないでしょうか。私の患者さんで良くなった人たちは皆「しつこく」行動療法をやり続けた方ばかりです。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.07.08更新

強迫性障害、曝露反応妨害法の工夫①

強迫性障害は、繰り返し心に浮かんでくる強迫観念によって引き起こされる不安感を軽減するための強迫行為を止められなくなる病気です。良くあるのが、強迫的確認と強迫的洗浄です。確認は鍵や電気・水道・ガス・火の元などが気になって、何度も確かめてしまうもの。洗浄は汚れているのではないかという感覚が取れずに何度も洗ってしまうものです。
強迫性障害の治療はSSRIを主体とした薬物療法と曝露反応妨害法という行動療法です。
行動療法は、強迫観念が起こるような状況を避けずに、引き起こされる不安感に直面して、強迫行為を行わないということをやります。
しかし、なかなか止められない強迫行為をやらないということは当然いろいろな工夫をしなければ成功しません。

工夫1.病気について徹底的に理解する
強迫性障害は自分の記憶や判断そのものがおかしくなってしまう訳ではなく、記憶や判断に自信が持てなくなっている状態です。強迫行為をするということは、自分を信じなかったということになり、ますます強迫観念がエスカレートしてしまいます。そういう病気の構造をまずは良く知ることが大事です。

工夫2.強迫行為をしないことを「我慢する」という捉え方ではなく「病気の脅しに応じない」と捉える
 人間は一般的に我慢が嫌いです。長続きしません。一方で、人間は強制されることが嫌いです。脅されて強制されるなんて好きな人はいません。そもそも、強迫行為というのは「病気に脅かされて渋々とやっているもの」であり、本来やりたいことではないはずです。それがいつの間にか「自分の意志でやっている」かのように錯覚させられてしまうのです。

工夫3.最初の課題は「何とかできそうなもの」をうまく選ぶ
最初に成功体験を持つことは何かを身につける上で非常に重要です。

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投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.06.25更新

うつ病患者さんの最終診察
今日、うつ病で通院されていた患者さんが無事に治療を終わられました。
ちょうど、2年前に初診となった方です。プライバシー保護のため詳細はかけませんが、職場で本来の業務とは少し違った役割を与えられて、そこでちょっとした失敗があったのを機に発病されました。
まず抗うつ薬を十分に使い、職場を一旦離れて休養していただきました。
日常生活レベルの行動に問題がなくなった頃、定期的な運動も指導しました。3か月の休職で寛解まではもっていけなかったのですが、職場側の事情で一旦復帰のタイミングを逃すと次回のチャンスが半年先になってしまうとのことで、本人や職場産業医とも相談して復職を決めました。
寛解状態ではなく、時間的に特別なリワークプログラムもできなかったので、再燃予防に何か工夫が必要と思われました。うつ病になる方は、組織の中で与えられた役割を果たせないと、職場との一体感が失われて発病する人がいます。この患者さんも、そのような状況で発病していました。
ただし、本来の業務には元々は自信を持っておられた方なので、「復帰後のあなたの役割は本来の業務のみ。それをしっかり果たすことが組織の中での期待に応えること」と強調しました。職場にも、この方針を産業医から伝えていただきました。復帰後に、自分が失敗した仕事について「後任者に迷惑をかけたのではないか」とか考えては多少症状が動揺するときがありましたが、そのたびに「今のあなたの役割は?」と再確認して、それを果たすことだけを考えるように指導し、危機を乗り越えました。
今日無事に治療を卒業され、「とてもうれしいです」と喜んでいらっしゃいました。最後にも「あなたの役割は?」と確認したところ、「本来の業務です。生き生きとやっております」と笑っていました。
ちなみに、当院でのうつ病休職者は90%以上の確率で職場復帰を果たされ、再休職に至る人はほとんどいません。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.06.20更新

パニック障害を根治させるために 精神科 東京
パニック障害が一旦良くなって治療を終結したものの、何年かして再発したということで当院を受診される方がいらっしゃいます。なぜ再発したのか?理由は多くの場合、「微妙な回避行動を克服できていなかった」ことです。
パニック障害になると、発作が起こった時に逃げられない状況を恐れて、乗り物を避けたり、途中下車したりするようになりますが、それを回避行動といいます。
「微妙な」というのは、あからさまに乗り物を避けるとかではなく、もっと分かりにくいものという意味を強調したいための表現です。
例えば・・・乗り物には乗るけど路線は固定とか、乗る時間帯を選んでいるとか、車内で奥の方には行かないとか、遅延情報は必ず確認して混みそうな時は急行に乗らないとか、地下の狭い店には行かないとか、狭い店の奥の方には座らないとか、要するに、回避行動ではあるがそのためにそんなに生活が障害されない程度のものです。パニック発作自体がなければ、微妙な回避だけでは患者さんもそれほど困らないために、問題である自覚がないのです。
ところが、この微妙な回避が残っているとパニック障害が再発しやすくなります。この場合は、行動療法を仕切りなおして、微妙な回避行動を洗い出し、それらを止めていくことが大事になります。
・パニック障害の治療を受けてある程度良くなった。
・もう大丈夫と思って、治療を終了した。
・しばらくして、再発。
・一生治らないのでは?と不安になる。
・しかし、良く調べると微妙な回避行動が残存していた。
・回避行動を洗い出して、行動療法で徹底的に克服すればOK。

パニック障害なら心療内科、東京都中央区の日本橋メンタルクリニック

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.06.19更新

かくれ躁うつ 東京都中央区 心療内科

双極性障害(躁うつ病)の概念が拡大され、今まではうつ病や不安障害と診断されていた方の中にも双極性障害の患者さんが多いことが分かってきました。潜在的には双極性障害なのに、表面的には別の病気に見えてしまうため、きちんと診断されていないケースを俗に「かくれ躁うつ」と呼んだりします。
診断はどんな病気でも、軽症ほど正しい診断が難しいものです。また、診断基準そのものにも問題があって、例えば、過去に(軽)躁状態がない人は、原理的に双極性障害と診断できませんが、双極性障害の患者さんの約6割は躁状態ではなくうつ状態が先行して発症することも分かっています。つまり、今はうつ状態でも後に躁状態を初めて呈するまでは、いかに疑わしくても診断基準に従う限り双極性障害とは診断できないということになってしまうのです。
臨床医がこの問題に注目するのは、単に細かい診断分類の違いにこだわるからではなく、治療薬の選択が全く違ってくるためです。うつ病や不安障害には現在SSRIを中心とした抗うつ薬が第一選択となりますが、「かくれ躁うつ」の患者さんに抗うつ薬を単独で使用すると、気分変動を激しくしてしまったり、自殺のリスクを上げてしまったりする場合さえあるので注意が必要なのです。
「かくれ躁うつ」ではうつ状態がなかなか治らないために、多剤併用になりやすく、それらの薬が病状をさらに複雑なものにしてしまったり、治らないのは本人のパーソナリティのせいと誤解されてしまったりすることがあります。
当院では、「かくれ躁うつ」をいかに正しく初診時に診断するかということに工夫を重ねてきており、5年前には30%を超えていた初診時見逃し率を3%以下まで改善することを達成しています。
東京都中央区の心療内科 日本橋メンタルクリニック

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.06.17更新

先日、東大職場のメンタルヘルス専門家養成講座(TOMH)第一期生の同窓会が行われ、そこで最新の情報をいくつか教えてもらってきました。
紹介された研究等で印象に残ったのは、ストレス対処法として「問題解決」と「気晴らし」の両方がその後の精神的健康を左右するという研究結果でした。
「問題解決」というのは、ストレスを引き起こすような問題に対して、その問題をきちんと整理して、現実的・具体的な解決法を考えて、実際にその解決法をやってみる。そして、うまくいかなければ、問題を捉えなおしたり、解決法を修正したり・・・そのプロセスを繰り返すというものです。
「気晴らし」というのは、いわゆる気分転換と同じと考えてよいでしょう。ストレスを引き起こしている問題そのものを解決するわけではないけれど、疲れた気持ちをほぐすような活動をやるということです。
この「問題解決」と「気晴らし」の両方ができていると、半年後の精神的な健康度が上がるというのが研究の結果で、この結果自体は極めて当然という感じなのですが、どちらかだけだと同様にダメというのが私の印象に残った点です。
「気晴らし」だけでは問題は解決せずストレスがかかり続けるので健康度が上がらないのはもっともで、これは予想の範囲でした。ところが「問題解決」だけをしている場合もダメというのが意外だったのです。
どうしてかというと、きちんと問題解決していればストレスが軽減するので大丈夫だという思い込みが私にはあったのです。しかしながら、やはり私たちはリチャージ(再充電)される必要があるということなのでしょうね。
余暇活動やプライベートの人間関係など、職場外で私たちをリチャージしてくれる資源の大切さが再確認できました。

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.05.16更新

身体表現性障害|自分の本心に向き合うこと 自分にあった環境を選ぶこと

当院を受診する身体表現性障害の患者さんは「感情的に孤立している」人がほとんどです。
本当は誰かに分かって欲しい気持ちがあるのに、「心配をかけたくない」「相手に迷惑と思われたくない」「どうせ分かってもらえない」などの理由で、自分の気持ちを抑えつけてしまうのです。
だから、人間関係がないという真の孤立ではなく、それなりの人間関係を持っているのに気持ちは表現していないという意味で「感情的に孤立している」のです。
こういう人は友人などから「何を考えているのか分からないところがあるね」「人当たりはいいけど壁があるね」などと言われることがしばしばあります。

本人の中で生じた感情、特に不満・不安・怒りなどのネガティブな感情は、抑えつけられても消えるわけではなく、それが体の症状になって出てくるわけです。
さらにそうやって出てきたからだの症状にばかり注目して、とらわれていきます。
気持ちを表現せずに、症状を訴えることで相手に理解してもらおうとして、ますます理解されなくなり、欲求不満が募ります。

こうして見てくると、身体表現性障害は一時的な病気というよりも、その人のコミュニケーションパターンとして持続している問題と考えたほうがいい場合が多いようです。
持続しているので、環境的なストレスが少ないときには大丈夫でも、ストレスがかかれば何度でも再発するわけです。当然、ストレス反応としての適応障害を起こしやすいとも言えます。

身体表現性障害が背景にあって、適応障害を起こした場合は、ストレス源から引き離すだけでは回復が遅いことがあります。
この時は、発症の直接の引き金になったストレスだけではなく、患者さんが抱えてきた家族間の問題を扱う必要があります。
ずっと言えなかった気持ちを家族に対して言葉で表現してもらいます。これがうまくいくと劇的に良くなることも稀ではありません。
その一方、家族と率直に話すことに抵抗する方も少なくなく、その場合治療がなかなか進まず苦労します。

身体表現性障害の治療、カウンセリングなら日本橋メンタルクリニック(東京都中央区)

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.05.15更新

自分の本心に向き合うこと 自分にあった環境を選ぶこと|適応障害・身体表現性障害

当院を受診される方の診断として多いのが適応障害と身体表現性障害です。
適応障害はストレスを適切に処理できずに反応を起こし、不安・抑うつなどの症状が主として見られるものです。
当院受診者は、過重労働や人間関係がストレスの原因であることがほとんどです。

そういう患者さんに「あなたは本当はどうしたいのですか?」と尋ねると、「辞めたい」「異動したい」「休みたい」などと答えられる人は少なく、「自分ではどうすればいいのか分からない」と答える方が大半を占めます。

適応障害になる方は、ぎりぎりまで「自分が頑張ってこの状況を乗り越えるしかない」と誰にも相談しないで無理をしていることが多く、受診する頃には疲れきってしまっています。
自分では決められないという「自己決定ができない状態」となっているのです。こういう場合は、一旦休ませて、自己決定できる状態へ回復させることが早道です。結局、自分が押さえつけてきた本心を確認し、それに従って、ストレスを減らすための対処をすることが治療になります。

逆に、早いうちから周囲に不満をもらし、「異動させて欲しい」と遠慮なく(?)言ってはばからないタイプは、未熟なパーソナリティや偏ったパーソナリティの方が多い印象があります。
この場合は、周囲の人は「適応できないのはおまえ自身のせいだ」と思うのですが、それでも、できるだけ本人の適性に合った環境にしてあげる方がうまく行きます。
自分の弱点を克服して、環境に適応するのは、パーソナリティに問題のある方には特に難しいからです。ただし、何度も同じことを繰り返すような場合はそうはいかないので簡単ではありません。
本人に自分の問題を自覚して自分自身を変えてもらわなければなりません。これは「言うは易し行うは難し」ですが。

適応障害・身体表現性障害の治療、カウンセリングなら日本橋メンタルクリニックへ

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

2013.05.14更新

当院に来院された患者様のご家族の方が、後日、患者様のご症状について説明を聞きたいと来院されることがあります。ご家族としてとても心配なことはよくわかりますが、来院される場合は必ず患者様の承諾を得てからいらっしゃるようお願いします。
ご家族といえども患者様の個人情報になりますので、当院の判断だけで患者様の症状などをお教えすることはできません。
心療内科 東京都中央区 日本橋メンタルクリニック

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

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