適応障害

適応障害も休養が大切
患者さんのストレス耐性の向上も必要

  • 明確なストレス因に反応して起こる心身の不調
  • うつ病と見分けにくいことがある
  • ストレスをどうコントロールするかがポイント
  • 環境調整だけでなく本人のストレス対処能力の向上も必要

適応障害とは

先日、当院受診者の診断分類統計を出してみたところ、3割以上の方が「適応障害」という診断でした。適応障害とは、はっきりと確認できるストレス因子に反応して起こる情緒面や行動面の症状が認められ、他の病気ではうまく説明されない場合につけられる病名です。具体的にはうつや不安症状が多いのですが、うつ病の診断基準を満たすほどではないようなものとなります。ただし、症状からはうつ病と見分けにくいものもあり、経過を慎重にみる必要がある場合があります。

当院にいらっしゃる患者さんの訴えるストレス因の第1位は「業務に対する負担感」、第2位は「職場の人間関係」です。「業務に対する負担感」は、実際に誰にとってもつらいだろうなあと思われる過重労働のこともあれば、本人の能力と要求される業務内容のギャップからくる主観的な苦痛が強い場合、業務を一人で抱え込んでしまい周囲のサポートを上手く求められないといった本人の性格的なものに起因する場合とさまざまです。

「職場の人間関係」では、圧倒的に、「上司とうまく行かない」がトップです。また、そのような上司のタイプとしてよく聞かれるのは「気分屋」「ヒステリックに怒鳴る」「えこひいきをする」「業務内容を理解しておらず指導力がない」などです。

甘えなのではないか?

ストレスなど誰にでもあるし、嫌なことがあって落ち込んだからと言って病気なのか?甘えではないのか?と、患者さん自身からもよく聞かれます。確かに、嫌なことがあっても多くの人は、自分の力で、時には人に相談して、乗り越えています。要するに、自分のストレス対処能力で処理しているわけです。

しかし、この個人の対処能力を超えたストレスが降りかかったら、どうでしょうか?ストレスがかかり続けると脳の前頭葉という部位の働きが低下して、本来の脳の性能を出せなくなることが分かっています。こうなると適切なストレス対処がますますできなくなり悪循環に陥ります。この状態はやはり本人の努力だけでは抜け出しにくく治療が必要と考えてもいいでしょう。

適応障害も休養が大切

適応障害では、ストレスを減らすことが治療です。ストレスを減らすには2通りしかありません。「与えられた環境に適応できるように本人が変わる」か「本人に合わせて環境を変える」かです。ストレスを減らすための方法を本人が冷静に考えられるような場合は別ですが、多くの場合はストレスで脳が本来の性能を出せない状態に陥っていますので、まず一旦はしっかり休ませないと回復しにくいようです。休養といっても、安静を保つより、仕事から完全に離れて好きなことをやることが大切です。

適応障害の薬物療法

適応障害そのものを治す薬物は存在しませんが、諸症状を和らげるために薬が使われることがあります。不眠には睡眠薬、不安には抗不安薬、うつ的な気分には抗うつ薬という感じです。双極性素因(双極性障害とまではいかないが、双極性障害になりやすい素質を有すると推測される素質)がありそうな時は、気分安定薬や新規抗精神病薬を一時的に使用することもあり得ます。

患者さんのストレス耐性の向上も必要

ストレスに対する反応ですから、患者さん側のストレス耐性も問題になります。同じストレスを受けてもストレス耐性が高い人は発病しませんし、低い人は些細なストレスでも反応してしまいます。パーソナリティ障害や未熟なパーソナリティの方、潜在的に身体表現性障害を有する方(感情認知やコミュニケーションに問題がある)、過去の喪失体験を消化できてない方、家族関係に大きな問題を抱えている方などはストレスに対して脆弱です。

患者さんにこうした問題がある場合は、ストレス源から離しても回復が遅れたり、適応障害を繰り返したりします。適切な環境調整とともに、患者さん自身のストレス耐性を高める工夫が必要になります。当院ではパーソナリティや家族関係に大きな問題がある方の場合にはカウンセリングを受けていただいています。身体表現性障害の方は、コミュニケーション技法を指導します。喪失体験の場合は悲しみの作業といって過去の喪失を十分に悲しみきって終わらせることを指導します。

TEL:03-3243-2772
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