2018.10.26更新

「前の病院では医者が話を聞いてくれなかったから・・・」という理由で当院を受診される患者さんが結構います。そういった患者さんたちが、一方的にすごく喋る人たちかというと、全くそうではありません。どうやら、きちんと問診をしてくれないとか、質問してもはっきりしたことを言ってくれないということが不満だったらしいのです。ひどい所では、初診時にアンケート用紙みたいなものを記入させられて、医師の診察は5分程度。それで「うつですね」と言われて、薬を出される。良くならないと伝えると特に説明はなく「それじゃあ、薬を増やします」と・・・。患者さんたちも、もっと医師に希望を伝えたり、説明を求めたりすれば良いのでしょうが、患者側の立場というのはなかなかそういうことを言いにくいものだとおっしゃいます。

 私は、とにかく話を聞けば良い医者であるとは必ずしも思っていません。例えば、うつ病のときなどは過去に自分が行った「良くなかったこと」を思い出して、クヨクヨ悩むことがあります。しかし、それを延々と話してもらって、それは良かったとか良くなかったとか言っても治療には役に立ちません。うつ病ならまず十分な抗うつ薬と休養です(現代型うつ病は薬や休養では良くならないと言われますが、それはまた別の話です)。この場合、うつ病と診断するために的確に問診、治療方針や薬の副作用・回復の大まかな見込みなどの説明等が、医者がすべき「話」で、それも当然なるべく効率的に行うべきです。さらに、日本の保険診療では、少なくとも1日30人程度は患者さんを診なければ経営的にも成り立ちませんから、時間をかけるにも限界があります。それでも・・・、やはり初診が5分10分では必要なことが聞けない可能性が高いですね。再診は別としても、初診はある程度時間をかけてくれる所が良いでしょう。診断に必要な情報を問診して、治療に必要な情報提供をする、そういう意味で「話を聞く」「話をする」医者が良い医者でしょう。ただおしゃべりを好む医者が良い医者ではありません。

 

投稿者: 日本橋メンタルクリニック

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